いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「せっかくなら、父さんと母さんにもその制服姿、見せてきたら?」
「うん……!」
白亜くんに促されて、私は冬服のブレザー服の内、チェックリボンを合わせたスタイルを選び、その身のまま軽い足取りで部屋の外へ出た。
――と、その直後。
「ぎゃっ!!」
「……」
偶然にも全く同じタイミングで目の前を通り過ぎようとしていた彼――黒芭くんの側面に体当たりしてしまう。
「ぃったぁ……」
鼻を思い切りぶつけてしまったため、地味にジンジンと鈍い痛みが襲ってきた。
「……。色気のねー声」
「なっ……。あなたね、人とぶつかっておいて第一声がそれなの?」
「ぶつかってきたのはそっちだろ」
「う……、ごめん」
黒芭くんは相変わらず刺々しい冷ややかな視線を私に突き付けたまま、少しの間、私の体の足から頭までをじろりと眺める。
「な、何よ」
「別に。アンタ、東蘭通うんだ。その能天気そうな頭で授業ついてこれんの?うち、曲がりなりにも進学校だけど」
「う、うるさいな。勉強は……それなりにはしてきたし、大丈夫、だと思う。……多分」
後から後から少しずつ追加されていく心許ない語句を聞き、想像通りとも言わん顔をして鼻で笑う向かいの彼をキッと睨む。
体のいい言葉が即座に浮かばず、皮肉にも自身の語彙力の乏しさを実感して呪いたくなった。
「あ、あなただって。部屋に閉じこもってゲームばかりしてるようじゃ、勉強なんてとても……」
「……」
私から続くであろう言葉を理解している様子だが、特に何かを言い返すでもなく私を一瞥した後、ただ一言。
「先に言っておくけど、今後、俺に必要以上に近寄んなよ。家でも、学校でもな」
「なっ……」
それだけを吐き捨て、彼はその場を通り過ぎて行った。