いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「んだよ、シロ。女連れか?テメーも随分と良いご身分になったものだな?」
あ、あれ……?
さっきの告発シーンでも思ったのだけど……。
艶やかなグレージュのロングヘアが特徴の可憐な見た目とはミスマッチな、荒々しい話し言葉に思わず視界を瞬かせる。
遠目だったし正面じゃなかったからあまりわからなかったけれど、黙って歩いているだけでもきっと、すれ違う誰もが振り返らずにはいられないほど、粗のない整ったお顔立ちをしていたその美女に、呆気にとられてつい言葉を失ってしまう。
「あ?なんだよアンタ。アタシに文句でもあんの?」
「い、いえ!滅相も、ゴザイマセン」
私が不躾に凝視してしまったことが気に食わなかったのか、彼女の眉が角度をつけて吊り上がった。それに恐れをなした私は、反射的に精一杯、頭を横に振ったのだけど。
「ふーん?で、アンタはシロの恋人?それとも次の恋人候補?」
「へ?コイビト?……いやいやまさか!!恋人でも候補でもないよ!!」
遅れて意味を理解した私が先ほどの数倍、必死になってそれを否定すると、「んじゃ追っかけか!?」なんて新たな誤解の種をまき散らしてくる始末だ。
「いやいやだから、私は白亜くんの彼女でも彼女候補でも追っかけでもなくて……」
「じゃあ一体何なんだよ。あーわかった。生き別れの妹か?前に妹がどうとかどっかの女子に言い寄られた時、話してたよな?」
「……はぁ。こうなるから言いたくなかったんだけど」
クセの強い目の前の彼女は、まるでついさっきまで見知らぬ男性から痴漢行為を受けていた被害者だとは到底思えなくて、ちぐはぐな認識の揺らぎに妙な冷や汗が出る。
そんな彼女の言動にも慣れているのか、白亜くんは億劫そうに息を漏らした後、「彼女は――」渋々といった様子で私に目を合わせて口を開いた。
「名前は、桃園エレナ。前に話した、僕とクロの……イトコ」