いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
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「ふーん。つまりアンタは、神代ファミリーに新しく加わった居候ってことか」
再び電車が動き始め、私たち3人は車内の端っこの手すりに掴まって会話していた。
さっきは大丈夫だったのか、特にその話題に触れる様子のない白亜くんに代わり、私がそれを尋ねると、彼女は眉ひとつ動かすことなく「全然?」あっけらかんとそう答える。
事情を聴こうと躍起になっていた職員の手を搔い潜って、何事もなかったかのように今こうして電車に揺られている豪胆な彼女の横顔からは、特段無理をしているような素振りも、強がっているような印象も感じられない。
「で、結局アンタは、神代家の居候ってことで合ってんのか?」
「……まあ、そんなとこ」
本人が気にしていないと言う以上、今知り合ったばかりの関係性の薄い私が口を挟むのもはばかれる。
私は、嘘か本当か、あくまでさっぱりとした態度を貫く彼女に視線を合わせて、その問いに頷いた。
“居候”という表現に思うところがないとは言わない。
ただ、最低限の生活費としてアルバイトのお給料を詰め込んだ封筒を手渡しても、聖さんと凛々子さんは決して受け取ろうとはしてくれなかった。
そんなわけで、結果的には同じ扱いになることは否定できず、彼女の言葉を訂正することも叶わずに私はぐっと唇を嚙む。
「ふーん。ま、シロはともかく、あの人嫌いなクロがアンタみたいなよそ者を大人しく家族に招き入れるとは正直予想外だなー」
「父さんと母さんの決定なんだから、息子である僕たちに何かを言う権利はないよ」
「……」
白亜くんが何気なく返したその一言に複雑な感情が見え隠れする。ネガティブになりたくなくて、自分を誤魔化すように窓の外の景色に目を向けた。
「お、見えてきたなー。アタシの学校が」
「エレナの学校ではないでしょ」
「アタシのパパの学校なんだから、アタシの学校って言っても問題はねーだろ?」
慣れたように苦笑する白亜くんとエレナさんのやり取りを背中で聞きながら、ようやく見えてきた東蘭高校の広い敷地に息をのんだ。