いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「あーうぜえ」
勝気な笑みを浮かべて辺りの女子生徒たちに愛想を振りまくエレナをやや生温かい眼差しで見つめていると。
「く、クロってば!そ、その、今日こそ、い、一緒に……っ」
「クロくん、ねえってば――」
「てかアンタら誰?馴れ馴れしく呼ぶな。うぜーから」
双子を囲む人だかりから姿を現したのは、大層不愉快そうに顔を歪めた黒髪の――黒芭くんだった。
彼は、生徒専用の駐輪場の前に待機する職員に学生証を提示した上で、自身の引いてきた自転車を預けると、そのままこちらを振り返ることもなく、校舎へと続く街路樹を進んでいく。
「クロくん……相変わらずクールで素敵……」
「これだからクロの追っかけはやめられないのよね~!!
……って時間ヤバ!今年の生活指導、中等部の頃噂になってた高松先生だって話だし、初っ端から遅刻なんかしたら絶対怒られる!」
「ただでさえシロくんともクロくんとも同じクラスになれなくて落ち込んでたのに~~!!」
先ほど彼に冷たくあしらわれた女子生徒たちは、それ自体には特に怯むこともなく、別の理由を話しながら駆け足でその場を去って行った。
「噂の高松先生とは……?そんなに怖い先生なの?」
偶然彼女らの会話が耳に入り、隣のエレナに向けて興味本位でその名前を尋ねてみる。
「ん?……あー。怖いなんてもんじゃねーよ。アイツに目つけられるとマジでろくなことねーからさ。アタシらも急いだ方が身のためだ。
っつーことで、ほらほら、皆行った行った!新学期初日から、能面ジジイの地獄みたいな説教に加えて座禅3時間組まされたくねーだろー!?」
エレナが辺りに群がる生徒たちにそう声をかけると、「それは勘弁!」「何それ怖すぎ!」口々にそんな悲鳴じみた声が上がり、徐々に密集していた集団が解散されて行った。
「ねえ、エレナ、それって一体どういう――」
その言葉の真意を探るため、そう言いかけたその時。
「ばーーかもん!!!!」
「いでっっ!!!!」
次に私が目を開いた時、どこからともなく現れた謎の男性教諭に、彼女は渾身の平手チョップをお見舞いされていたのだった。