いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「それより時間。僕たちもそろそろ行かなきゃ本当に遅れるよ、始業式」
「え!?」
「まだクラスも確認してないんでしょ?僕はもう見たけど」
嵐のような御仁の登場に気を取られすぎて、私は肝心なことを忘れていた。
そうだ。始業式!
さっきの女の子たちもそれに遅れまいと急いでいたというのだから、さらに遅れている私が慌てない理由はない。
「クラス……。あ、そうか。私、自分のクラス知らない!」
「そりゃそうだよね。校内で確認する用のクラス表は、中央広場の電子モニタで色彩認証して初めて表示されるようになってるし」
「だからそういうことは早く言ってってば!」
あっけらかんと答える白亜くんに八つ当たりしながらキョロキョロと辺りと見渡した。
すぐ近くに案内板を発見し、“中央広場”の表示を見つけた私の足がそちらへ向かう。
その私の手首を素早く掴み、それを制したのは他でもない隣の彼で。
「この時間なら直接アリーナに向かった方が早いよ。もう移動も始まってそうだし」
「え?でも……」
「僕と同じクラス。普通科2年A組、出席番号12番、咲田菜礼さん?これでいい?」
「!!」
そう言って白亜くんが私の目の前に突き付けたスマホ画面には、私の学生証情報とともに在籍クラスの詳細が明記されていて、そこには“教室情報:普通科2A/番号:12”の文字が表示されていた。
「え!どうして!?」
「わざわざ広場の電子掲示板に赴かなきゃ確認できないとでも思ってる?東蘭生徒用の専用アプリからアクセスできるようになってるんだよ」
そう当たり前のように話す白亜くんだけど、中学生の頃に必死になって紙のクラス表から自分の名前を探し出した思い出の残る私は、急速な時代の変化についていけない。
「ちなみにエレナとクロも一緒だよ。良かったね」
「え、嘘っ!本当?く、黒芭くんはともかく……エレナは嬉しい。よかった……!」
「冷たいなあ。クロのことも喜んであげればいいのに」
白亜くんはそう言ってまた悪戯ぽくくすりと笑うと、そのまま腕を引いて「疑問は解消した?」穏やかな口ぶりで方向転換を促す。
少し先に見える、立派なホールの屋根。恐らくあれが、始業式の会場のアリーナだ。
「ほら、ちょっと走るよ?座禅、組みたくないでしょ?」
「え!あれって本当だったの!?」
「どうだろ?エレナの師匠は怖いからね」
冗談めいた言い方に、話半分で反応を示しながら、私は小走りで駆ける白亜くんの背中を追うのだった。