いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
episode.4~初登校日~




「いやあ、本当あのクソジジイ、加減ってもんを知りやしねー」


白亜くんに連れられてそそくさと紛れ込んだ始業式も無事に終わり、私はクラスメイトらしき人たちの跡に続いて教室を目指して歩いていた。

いつの間にやら合流していたエレナが、眉間に深いシワを寄せてため息を吐く。

あの後、相当にシゴかれたのか、彼女は屈辱を噛みしめるようにして苛立ち気に頭を掻いていた。


「……ハッ!とかなんとか言ってると大抵あの地獄耳のジーサンがどっかで聞き耳立てて……」

「高松先生って一体何者なのよ……」


警戒心をMAXにしてキョロキョロと辺りを見回す彼女の鋭い眼差しに苦笑する。

流石に周囲に潜んでいる様子はなかったからか、ほっと胸を撫で下ろしたように息を吐くエレナは、嫌悪感を増し増しに現した表情で私の疑問に答えた。


「元々は母方の親戚のジーサンなんだけど、昔実家でアタシと兄貴の教育係しててさ。何でか知らねーけど、アタシが中学に上がった頃にうちの学校で日本史の臨時教師始めたんだよ、あのジーサン。どうせパパかママ辺りの差し金なんだろうけど」

「それが何で今度は高校に……?」

「ああ、その中学って東蘭の中等部のことだからさ。ほんっとひでーんだぜ。アタシの中学時代ってマジで地獄でさ、朝から晩まで勉強と稽古漬けの毎日!ようやく高校進学でそんな生活ともオサラバできると思ってたのによ、今度は高等部にまで追いかけて来やがった。アタシに与えられた休息期間は高1ん時の1年間だけだったなんて、パパとママのこと一生恨むわ」


そう怨念込めて話す彼女の目はマジで、それはさぞかし辛い日常だったのだと、何も知りえない私が勝手に心中を察するほどだ。

稽古というのを深く聞いてみると、どうやら高松先生は空手と剣道の元日本チャンピオンだったらしく、自他ともに認める武道の達人だというのだ。


「そ、それは……なんていうかその、ご愁傷様」

「全くだよ!」


なんて他人事に同情してはいるものの、他の生徒の間でも話題になっていたような厳格な先生が、今後自分の通う高校で教鞭を執るのだから、相当に厳しい教えが待っているのだろうと想像は容易い。

勉強もスポーツも決して得意、とは言えない私の背筋がひやりとする。まだ接点はほとんどない先生だというのに、既にあらぬ未来を予想して身震いしてしまった。

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