いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
あの男は相変わらず、マイペースというか、自分本位というか……。
私は顔の見えない黒髪を一瞥して、心の中でため息を吐く。
「シロくん、今日その子と一緒に登校してきたんでしょ?」
「その子、何なの?二人のどちらかの……その、彼女とかじゃないよね!?」
ああ、なるほど。やはり、そういうことか。
この刺々しい視線が意味するもの――それは要するに、クラスの王子様ズを独り占めされたことによる嫉妬の渦だ。
いや、別に独り占めしたつもりはないんだけどな。エレナもいたし。
でもまあ、エレナは彼らの身内だし、彼女は彼女としてその地位を確立しているようだし、恐らく警戒対象外なのだろう。
「うん、一緒に来たよ?一緒に二人で家を出て、二人で電車に乗って。あ、でもクロは偶然校門の前で居合わせただけで一緒に登校したわけじゃないけど」
「な……!?」
それを聞いた彼女たちの表情が一様に陰る。それもそのはず、わざわざ白亜くんは誤解を生むような言葉を選んで、嫉妬を煽るような物言いで表現したのだから。
私が反射的に彼を見返すと、にっこりとしたいつもの笑顔で何も言わずにこちらに視線を合わせてきた。
「ったくよー。オメーもわざわざ面倒事が増えるような言い方すんじゃねーよ。遠い親戚で、急きょシロたちの両親が家で面倒見ることになっただけだろ」
「遠い親戚……?はは、そっか、そうでした。でもウソはついてないんだけどな」
呆れ顔で眉を顰めるエレナが、どうにか機転を利かせたフォローを入れてくれたおかげで、
「え?親戚……?」
「彼女じゃないんじゃん!身内だってよ!」
「もー!誰よ二人のどちらかに恋人ができたなんて噂流したヤツ!」
クラスメイトの女子たちや、同様に状況を探っていた他クラスの生徒たちが、潮が引くように去って行った、のだけど。
「……」
私は悪びれることもなく涼しい顔で生徒たちと話をしている彼の横顔を、少しの間睨み続けていたのだった。