いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「ゲッ……!アタシ一番前じゃん!絶対イヤだ!アタシも替わってもらお!」
「ええ!?ズルいよ!私だって教室のほぼ真ん中なのに!」
「あー?じゃあ菜礼も替わってくれるヤツ探すしかねーんじゃん?」
エレナは白い歯をキラリと見せつけて怪しい笑みを浮かべた。
そして再度名簿を確認し、ひとつ飛び出した31番席で眠る黒芭くんの前――30番目の座席へと足早に駆けて行く。
「よっ!颯介!オメー、まーた同じクラスかよ!しつけーぞ!」
「んあ?って、エレナやん!なんでやねん!こっちのセリフやわ」
「菜礼、紹介してやるよ!こいつは利久颯介。エセ関西人」
「アホか!誰がエセやねん!コテコテの関西人やわ!」
そう言って、テンポ良くエレナに合いの手を入れる彼は、出席番号30番の張本人。緋色の赤毛が印象的な、陽気そうな青年だった。
本場の?関西人の意地なのか、しっかりとエレナにツッコミをかます傍ら、初対面である私へも目を向けて、人好きのする懐っこい笑顔を浮かべる。
「なんやようわからんけど、自分さっきまで注目されとった有名人やん!初めましてやな!よろしゅうな!」
「え!?いや有名人ではないけど!と、とりあえず、私、咲田菜礼!よろしくね!利久くん」
「“颯介”でええで!俺も菜礼って呼ばせてもらうわ」
彼の片耳に光る銀のピアスが光を反射する。明るく少しヤンチャそうな颯介くんによく似合うピアスだった。
見る限り、彼はエレナと随分親しいらしい。会話の感じからして、1年次のクラスメイトだったようだ。