いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
私と颯介くんが簡単に挨拶を交わすと、それを見計らったように「なあ、颯介」彼の机に両手をついて軽く首を傾げるエレナ。
「本題なんだけどさー、アンタの席とアタシの席替わっ――」
「却下!」
その後に続く言葉を予想していたのか、エレナの渾身のおねだりを容赦なく薙ぎ払う颯介くんに、エレナはギャーギャーとまくし立てるように恨みつらみをぶちまける。
「……うるせえ」
「うおっ!?クロ、お前起きとったん!?さっきまで俺の挨拶ドスルーやったやん」
そのさ中、不機嫌をあらわにした顔で机から頭を起こし、颯介くんの声も堂々と無視してエレナと、なぜか隣の私を交互に睨む黒芭くんと視線が交差した。
私、別にそこまでうるさくしてないはずなんですけど!?
「おー、クロ。なあ、アタシとそこの席替わって?」
「……」
「おい、テメー、当たり前に無視すんなよ!」
辺りにどす黒いオーラを放ちまくっている黒芭くんのことなどまるでお構いなしに、マイペースに自分を貫くエレナにはもはや脱帽しかない。
話すだけ無駄だと判断したのか、顔を顰めながらスマホを取り出し、時間か何かを確認する黒芭くんの元に、今度はまた別の足音が近づいて来た。
「確かに、そんな特等席を無条件で勝手に強取するのは僕もどうかと思うな~」
自分の席で女子生徒たちに囲まれていたらしい白亜くんが、さらりとそこから抜け出して、にこやかな笑みを浮かべながらこちらの輪に入ってきた。
「そーだそーだ!そもそも元の31番席の、えーと、ワダ?っつー女子はどうしたんだよ?」
「……別に。始業式始まる前に、向こうが勝手に譲ってくれただけだけど」
エレナの問いかけに少し間を置いて、黒芭くんが淡々と返事する。
彼の出席番号6番の座席に座る女子生徒に目を向けると、丁度その子の周りでもこちらの噂の最中だったのか視線がぶつかった。
ふいに見つめられて恥ずかしくなったのか、慌てたように顔を背けてしまう。