いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

行き場をなくした視線を彷徨わせていると、そのタイミングで昇降口までやって来た別の青年の姿を捉える。


「あ、颯介くん」

「ん?おー、菜礼やん!まだ帰ってへんかったん?エレナは……じっちゃんに捕まったか」

「多分そう。颯介くんは?もしかしてその恰好……」

「俺?俺はこれから練習やで。サッカー部やねん。つっても今日は自主練やけど」


鮮やかな青のユニフォームに着替えた颯介くんが、すぐ近くの白亜くんと離れた場所の壁に背を預ける黒芭くんの存在に気付いたらしい。

私と彼らを交互に見やった後、ニヤリと口角を上げて得意げに口笛を吹く。


「なるほどなるほど?学校の王子様二人を引き連れて、優雅に登下校って噂はマジやったんやな?」

「違うから!その、諸事情で帰る家が同じなだけ。それに今朝一緒に登校したのは白亜くんとエレナだけだからね!?」

「ああ、遠い親戚?とか言うてたな、よう知らんけど。ま、気ぃ付けて帰りや?こいつら、熱狂ファン多いで?」


話によると、颯介くんも東蘭の中等部出身らしく、双子との付き合いもそれなりに長いらしい。

ニヤついた笑みを向けられた白亜くんは、「東蘭サッカー部期待のエースにだけは言われたくないなあ」なんて爽やかに返す。


「よう言うわ!ほな、またな!」

颯介くんは、最後に二カッと屈託なく笑うと、ひらひらと手を振りながらグランドへ駆けて行った。


「とりあえず、僕たちも出ようか」

颯介くんを見送った後、右腕のスマートウォッチで時間を確認した白亜くんが、なぜか大人しく待機してくれている黒芭くんに目線で何かを合図する。

気怠げにため息を吐いた彼が、壁から背を離し、ひとりでに昇降口から出て行った。


「ほら、校門までは一緒に行こ?」

目に見えない冷や汗を流しながら、仕方なく頷く。

私は二人の跡を追って、初めての校舎を後にしたのだった。

< 35 / 129 >

この作品をシェア

pagetop