いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
引越し当日――
「またあの人の家に行くの?いい加減、やめたらいいのに」
現在と変わらず、行儀良く朝食を摂っていた白亜の隣で、俺は残ったおかずとご飯を勢いよくかき込んだ。
「今日で、最後なんだ」
「最後?」
「マニラ、遠くへ行っちゃうんだ。新しい家族と一緒に」
「ふうん。そうなんだ」
それを聞いても、白亜は顔色一つ変えずに、茶碗の最後の一粒まで残さず丁寧にご飯を食べ進める。
あんまり動物に興味がないのかな。
ユキさんには最初、“二人でお見舞いにおいで”そう言われたはずだが、結局あれから白亜が一緒に彼女の家に行くことはなかった。
以前から薄々感じていた疑問を、何気なく本人に問うてみる。
「白亜ってさ、動物嫌いなの?」
「別に好きでも嫌いでもない」
予想通りの素っ気ない返事だったが、俺が反応する前にヤツは続ける。
「でも、人間の大人は嘘をつくから、嫌い」
人間の、大人……?
俺はそこでふいに記憶に舞い戻ったあの言葉を会話に出してみた。
「嘘をついた大人がいたから、ヒャクトーバンツウホウ?ってやつをしたの?」
「……そうだよ」
そう答えた白亜の声を同じ食卓の席で聞いていた父親の顔は、大きく広げられた新聞紙で隠れて見えなかった。
それでも子供ながらに何となく、あの時の家族の間に流れた空気がひどくピリッと張り詰めたのを憶えている。