いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

自分から訊いておきながらどう反応すべきか困惑した結果、結局「ふーん」なんていう当たり障りのない返事をして、空になった食器の上に箸を置いた。


ピンポーン!

「ごちそうさまでした」と手を合わせたのと同じタイミングで、家のチャイムが室内に鳴り響き、俺は用意しておいた菓子折りとキャットフードを手に、玄関へ走る。


「ユキお姉ちゃん!マニラ!おはよう」

「おはよう、黒芭くん。あ、おはようございますー!」

「おはよう、ユキちゃん。いつもごめんなさいね。お礼のお菓子、持たせてるからお家で食べてね」


玄関に見送りに来た母親が、俺に持たせた菓子折りに軽く目配せしてユキさんに挨拶する。


ユキさんの家に初めて行ったあの日は、どうしても白亜に遊んで欲しくて、いつもは禁止されている家の敷地外にまでこっそり足を伸ばして、白亜を公園に連れ出していた。

その結果、あんな事態になってしまった挙句、その後こっそりユキさんの家に通い詰めていた俺の行動は当然両親にもバレて、こっ酷く説教を食らったものだった。

後日、ユキさんの家に謝罪に出向いた父親に、彼女は自分が近くまで迎えに出ることを条件として、俺が遊びに来ることを許可してもらえないか、そんな提案をしてくれて、それ以降時折彼女は俺の家を訪れるようになっていた。


そして今日、猫用キャリーに入れられたマニラとともに、彼女は俺を家まで迎えに来た。

これから里親となる彼女の知人の家に猫を届けに行くらしく、俺はそれに同行する約束をしていたからだ。


「ありがとうございます!いただきます。それじゃ黒芭くん、行こっか」

「うん。お母さん、行ってきます」


ユキさんに差し出された手を、俺は土産を持っていないほうの手で繋ぎ、家を後にする。

そうして10分くらい彼女と一緒に歩くと、目的地のアパートが見えてきた。

玄関ドアの前には、引越し用に手配したのか、荷台の広そうな軽トラックが停まっていて、既に家具や家電製品が積み込まれていた。

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