いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
*
「――――!!」
照明の消えた真っ暗な部屋の天井に、俺は手を伸ばして目を覚ました。
「……夢か」
じっとりと嫌な汗を額に感じる。
命の責任。
当時幼かった俺には、それが一体どういうことなのか、まるで理解できていなかった。
言い訳なんてできない。
俺は、俺の身勝手な行動をきっかけにして、マニラという尊い命を失った。いや、奪ったんだ。
「……」
夕方、血相を変えて自転車の荷台から飛び降りるあの女の後ろ姿が、当時の俺に重なって見えて。なんだか凄く、不愉快だった。
慌てて追いかけると、そこには呼吸の浅い一匹の猫がいた。
女は、迷いのない真っすぐな眼差しで“猫を助けたい”そう言った。
もう動物に、何かの命に、関わりたくなんてなかったのに。
あの女があの時の馬鹿みたいな俺と同じ目をしていたから。
「はぁ……」
俺は明かりをつける気にもなれず、片腕を汗ばんだ額の上に置いて、深く息を漏らす。
マニラは俺を恨んでいるだろうか。
あの時の最後の決死の鳴き声は、彼女の命を無責任に奪った、俺への怒りの叫びだろうか。
こめかみに流れる汗を拭う気力もわかず、俺は真っ暗な闇に呑まれるように、開きかけた視界をもう一度閉ざして、そっと小さく息を吐いた。
~black side END~