いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「そんなに見られると、紙に穴が開いちゃうかも」
エレナが開きっぱなしで机に戻したその雑誌を、食い入るように眺め続けていた私の鼻孔を、淡いコロンの香りがくすぐる。
顔を上げた先には、今まさに大穴を開ける勢いで直視していた誌面の彼と同じ顔をした青年が、いつもの微笑をたずさえて立っていた。
辺りには、どこか私を恨めしそうに見やる女子たちが一歩距離を置いて彼の後ろに群がっている。
「わあ……。ご本人登場ってやつだ」
「恥ずかしいなあ。一生懸命隠してたのに。さては、密告者はエレナだなー」
そうして名前を挙げられた彼女はというと、有名な棒キャンディーを片手に舌なめずりして誤魔化すように目を逸らしている。
「もしかしてこの前言ってた用事って……」
「実はそうなんだよね。これはもっと前に撮ったやつだけど」
ということは、2台持ちしていると思っていた黒いスマホは、モデルのお仕事用に使用している端末ということだったのか。
私が意外と身近に潜んでいた“芸能人”の存在に感嘆の声を上げると、「なに?」白亜くんが渋い顔をして苦々しく突っ込む。
「いやー、芸能人ってこんなにすぐ近くにいるもんなんだなーって……」
「大げさだよ。読モの大半は一般人がアルバイト感覚でやってるようなものだし、僕だって芸能活動も、今は特にやってないし」
そう謙遜する彼の言葉の一部が引っ掛かり、私が口を開きかけると同時に、HRの予鈴が鳴った。
私は仕方なくそれを飲み込み、着席し始めるクラスメイトたちに合わせて自分の座席へと移動する。
「シロー、それじゃあまた後でねー」
「バイバーイ」
他のクラスから白亜くん目当てに集まっていた女子生徒たちも口惜しそうに挨拶すると、散り散りになって各々の教室へ帰って行った。