いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

白亜くんの姿が螺旋階段から見えなくなると、私の向かいの席に腰を下ろした聖さんが口を開く。


「すまなかったね。私にはもう1人息子がいるんだが。なにぶん、愛想のない子で」

「い、いえ。大丈夫です」

「白亜が連れて降りてくるだろうから後ほど紹介しよう。ところで、なつ恵さんの具合はどうかな?」


聖さんは心配そうな表情で祖母の名前を口にする。

お祖母ちゃんが言うには、二人は古くからの知り合いみたいだけど、どういう関係性なのだろうか。


「右腕と左足と……あと色々体の一部を骨折していてまだ歩行とかはちょっと。でも体調は問題ないみたいです」

「そうか。いつも元気そうにしていたからね、今回の件は本当に肝が冷えたよ」


私の視線が気になったのか、聖さんは「ああ」と何かを察したように声を上げる。


「なつ恵さんから深くは聞いてないかな。なつ恵さんは、僕の大学時代……それと、今の会社を起す時にもお世話になった恩師でね。もう20年以上の付き合いなんだ。ちなみに、君のご両親はその大学の頃の同級生で、僕も妻も、当時からすごく仲良くしてもらっていたんだよ」


ここで初めて彼の口から発せられた“両親”という言葉に、私の心臓が予想外にどきりと跳ねる。

私はまだ記憶のあやふやな3歳の頃に、事故で両親を亡くした。

以降は、母方の祖父母が両親に代わり、愛情いっぱいに育ててくれたのだが、その数年後祖父が病死し、以降はなつ恵お祖母ちゃんと私の2人暮らしを続けていた。


そして先日、3月のある日。
買い物に出ていた祖母は、出先の階段から足を踏み外し転落して全治数か月の大怪我を負ったのだ。

すぐさま病院に運ばれ当面は入院となり、私は祖母のいない我が家で退院までの間、一人きりでの生活を送るものだと思っていた。


――が。


「これは菜礼ちゃんには謝らなければならないかもしれないのだけど、なつ恵さんに退院後も施設に入るよう勧めたのは他でもない僕なんだ。もう、なつ恵さんも御年70歳。いつ何かしらの病を患ってもおかしくはない」


まだ成人前の孫の生活の面倒を見ながら自分の生活も送らなければならないとなると、70歳の祖母には負担が大きい。

それに私自身は学校やアルバイトで日中は家を空けていることも多いし、出来る限りで支えてきたつもりではあるけれど、それも限界があった。


だからこそ、お互いのためにも祖母を施設に入れ、孫の私の面倒は、祖母に恩義もあり両親の親友でもあった自分たち夫婦が見ると、聖さんはそう進言してくれたらしい。

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