いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
めちゃくちゃ遠慮なしにガン見してくる櫂先輩から逃れるように、だんだんと私の視線の先が廊下の方に寄って行く。
「――おい!兄貴!!」
その先に、突如現れたのは、そんな向かいの櫂先輩の妹のほうだった。
「エレナ!」
「おー、これはこれは~。俺の可愛い妹、エレナちゃんじゃないか~!」
私が目を見開いて彼女の名を呼ぶも、対する櫂先輩はというと、何やら憤慨している様子の妹を余裕めいた表情で見据えている。
「なんで……なんで兄貴がここにいんだよ!!」
「いやーん、エレナちゃんこわーい」
鬼の形相でここまでやって来たエレナからわざとらしく逃げるように、私の背に隠れる振りをする櫂先輩。
「え、エレナ……?なんでって、エレナのお兄さんなのにどういうこと?」
「留学先からいつまでも帰ってこねーと思ってたら勝手に留年してるし、それでいて全然帰ってこねーし。家でもまだ会ってねーんだよ、アタシと兄貴はさ」
「ええ!?」
エレナの発言を聞いて仰天する私と、どこか予想していたのか二人そろって深いため息を吐く双子。
肝心のお兄さんである櫂先輩はというと、飄々とした態度を崩さずに、「テヘ!」なんておどけて笑っている始末だ。
「それはさぁ~、仕方ないじゃーん?帰国したのついこの前だし~。あ、でもちゃんと葛西経由でダッドには伝えてあったよ?久々の日本だったからさぁ、ちょっと回り道してただけで~、昨日はちゃんと離れに帰ったし~」
「き、聞いてない!アタシ何も聞いてねーんだけど!!」
「んもう~。エレナたんはまーたそんな言葉遣いして~。いい加減、お上品になりなさーい」
「う、うるせーな!兄貴には関係ねーだろ!大体、留学の件だって勝手にひとりでどんどん進めやがって、気付いたらいなくなってて、また突然帰国して……。意味、わかんねーよ、この馬鹿兄貴!」
エレナは次第に声を震わせながらそう言い放つと、その場から逃げるようにして櫂先輩の前から走り去って行った。