いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
white side⁺゜
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「……それで?」
廊下を駆けて行く華奢な背中を目で追って、面白いものでも見るように怪しい笑みを浮かべる正面の男に、僕は無表情で声をかける。
「どうして急に戻ってきたの?櫂。エレナがこうなることくらい、最初からわかっていたはずだよね?」
「ん~?まー、エレナは極度のブラコンだからなぁ~?お兄ちゃんのことが好きすぎて、突然の再会に激しく心乱される妹。どう?なかなか羨ましいでしょ?」
質問に質問で返す不躾な彼は、核心にはあえて触れずにのらりくらりといつもの調子でさらりと嘯く。
「櫂……」
「用が済んだなら俺は帰る。バイトあるし」
呆れながらエレナの兄――櫂を見ると、今度は不機嫌そうに顔をしかめた弟が、そのまま帰る気で持ってきたらしいカバンを肩に担いで、僕らに振り返ることもなく教室を出て行った。
「黒芭は変わんないねぇ~。あの極度の人嫌い、まーだ治ってねーのな~」
「クロが素直だった頃なんて、精々小学校低学年くらいまでの話でしょ。きっともう一生あのままだよ」
「そんな孤高のクールガイとは正反対の、正統派貴公子様って感じだな~、お前は」
「別に、そんなんじゃないけど」
僕が目を伏せて答えるも「またまたぁ」なんて嫌味っぽく笑って返す櫂は、身内ながらもさすがの血筋と言うべきか、妹のエレナ同様、人の目を引く見た目の華やかさがある。
それに加えて、好奇心と警戒心を同時に抱かせる独特のオーラを醸しており、決して腹の底を覗かせない、徹底したポーカーフェイスぶりは今も昔も変わらない。
そんな2歳年上のイトコ・櫂は、幼少の頃からひどく奇妙で突飛な人間だった。
いつも大体飄々としていて余裕があり、比較的“大人っぽい”とか“落ち着いている”などと形容されがちな僕の目から見ても、かなり不思議な存在だった。
僕が初めて櫂に会ったのは、6歳の誕生日。
僕と黒芭は12月24日――世間で言うところの聖なる前夜、クリスマスイブ生まれで、当時の僕が住んでいた神代家では、その日盛大なお祝いパーティが催された。
と言っても別に業界のセレブとかいうわけでもないし、やけに張り切った両親が、家でちょっと豪華めなクリスマス兼お誕生日パーティーを企画しただけなんだけど。
その日、緊張して兄の背中に隠れつつ手を引かれたエレナを連れて、当時からずっと彼らの家の使用人として従事し続けるベテラン執事、葛西とともにやって来たのが櫂だった。