いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
何かを言いたいのに、なんと言っていいのかわからず、私は目を伏せる。
代わりに何度か小刻みに頷くと、意図を理解してくれた様子の聖さんが申し訳なさそうにして苦し紛れに笑みを浮かべた。
「よかったら……聞いてもいいですか?父と母がどのような人だったか」
「ああ、もちろん。
僕と凛々子は大学で知り合ったんだけど、二人は高校からの付き合いだったみたいでね。ずっと腐れ縁だなんて笑ってたけど、僕たちが交際を始めた少し後にようやく正式に付き合うようになったみたいで。当時は見ているこっちの方がどうにも焦れったくて何度もヤキモキしたものだが……」
そう、大学時代を懐かしむように話す聖さんは、同意を求めるようにすぐ傍に立つ凛々子さんに笑いかける。
「そうねえ。待ちきれなくて私と聖さんが先にくっついちゃうくらいに、ふふ」
「何度も晴貴――君のお父さんには口うるさく言ったものだよ。さっさと江莉さんに告白しろってね。晴貴は真面目でちょっと不器用な男だったから、なかなか思うようにいかなくて」
「江莉も、明らかに想い合ってるのにちっとも素直にならないんだもの。あれこれ手を回してどうにか二人をくっつけさせることができた日にはようやく私たちの肩の荷も下りた感じがして」
私の両親の名前を呼んで、聖さんと凛々子さんの二人は優しく微笑む。
本当に仲良しの4人組だったんだなと、顔もほとんど憶えていない両親とともに笑い合う情景が目に浮かぶようだった。
父と母は、素敵な友人に恵まれて、幸せな学生時代を過ごしたんだと実感し、私は胸が温かくなった。
「聖さん、凛々子さん、未熟者ですが……今日からよろしくお願いします。家事は祖母と協力して一通りはこなしてたので、ある程度はお手伝いできるかと思います。だから……」
そう言いかけた私の言葉を遮るように、またしても私の視界が瞬時に奪われる。
「……!?」
「もう~。そんなに畏まらなくていいの!ハルくんと江莉の娘は私たちの娘も同然なんだから!」
「凛々子の言う通りだよ。それでなくても僕はなつ恵さんとも約束してるからね。本当の家族だと思って、ここを君の第二の家だと思って過ごして欲しいよ」
凛々子さんは窘めるようにそう言って、腕の中の私を真っすぐに見つめた。それに続くように聖さんが同調して微笑む。
私は強張っていた表情を力なく緩めて、二人に応えるように笑い返して頷いた。
今日からここが新しい我が家。さっきまで抱えていた不安が少しずつ溶けていくのを感じる。
姿の見えない両親の影が、私の背中を押してくれているのかもしれない。