いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
episode.2~白と黒の双子たち~
「ほら、そんなダルそうにしない」
そんな中、螺旋階段に再度現れた白亜くんの横顔が視界に映る。
「わかったから引っ張るなよ」
「引っ張らなきゃクロは意地でも部屋から出てこないから」
「……」
淡い髪色の白亜くんとは対称的な、艶めいた芯の強そうな黒髪の青年が、なんとも気怠そうな渋い表情を貼り付けて重い足取りで1階へと降りてきた。
すごい、そっくり……。
隣に並ぶ白亜くんと瓜二つのその顔を凝視する私に気が付いたらしい彼が、瞬時にその美しい眉を際限なく吊り上げる。
顔は似ているけど、纏っている雰囲気はまるで別人だった。
白亜くんの穏やかな表情とは対極にあるような、鋭く尖ったオーラと目つき。
他人を寄せ付けまいとする、敵対心や警戒心を隠す気のないその瞳が、私に忌憚なく嫌悪を向けている。
「ようやく降りてきたのか、全く。最初くらいちゃんと挨拶するよう伝えてあっただろう」
お世辞にも褒められた態度とはいえない彼を見た聖さんが、呆れたようにそれを咎める。
「別に。挨拶ならさっきしたし」
彼は反省のハの字もないような物言いで、父親に目を合わせることなく吐き捨てるように答えた。
え、さっき……?それってもしかして、一番最初のチャイムの時?
あれは到底“挨拶”とは言えないと思うけど……。
私は一応名乗ったけど、彼の名前は一切教えてもらってないし、そもそもチャイム越しにする挨拶とは一体……?
「……。黒芭、16歳。以上」
言葉を発さない聖さんの威圧と、不審がる向かいの私の視線を感じ取ったのか、渋々といった様子で誰に言っているのかわからないような状態のまま、たった一言、彼――黒芭くんは“挨拶”をした。