いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「そ、その……つ、付き合ってるとかじゃ、ないんだよね!?」
全ての作業が終わった頃、僕が置きっぱなしにしていた自分のカバンを手に取ると、いつの間にやら教室の入口まで移動していた琉唯が、落ち着かない様子で目線を右往左往させながら口ごもる。
「付き合ってるって、クロとなーちゃんのこと?」
「そ、そう。だってクーが……特定の女に対してあんな風な……特別扱いする、みたいなのって見たことなかったし……」
そう話す彼のそれは、まさに恋する乙女同然の口ぶりで、見た目もその辺の女の子以上に女子っぽい形をしているからか、あまり違和感がない。
僕は声には出さないまま、つい意地悪い笑みをこぼしてしまった。
「な、なんだよ。別に、僕は……」
「付き合ってはないと思うけど、まだ」
「まだ?まだってどういうこと?あの女はこれからクーと付き合う可能性があるってこと?」
「そりゃーあるでしょ」
悪びれもせずにそう答えると、琉唯は見る見るうちに顔を真っ青に染めていく。
その姿が面白くて、ついいじめすぎてしまった自分を少し反省した。クロにバレたらまた不機嫌な目で睨まれそうだ。
「ほらだって、可能性で言えば誰にだってあるでしょ?僕にだってあるし、キミにだってあるよ?」
「……なっ!ぼ、僕にはない!そもそも僕はあの女が嫌いだし絶対ない、有り得ない」
「絶対なんてものはこの世に存在しないと思うけど……。
じゃあ、クロと琉唯が付き合う可能性ならあるんじゃない?僕はそういうの、反対しないけど」
「……!あ、頭おかしいんじゃないの!?からかうなよ!もういい!」
琉唯はそれ以上僕の話を聞く気がないようで、顔を赤くして怒りをあらわにしたまま、パタパタとその場から去って行った。
「さて。僕も帰るかな」
誰もいなくなった教室で、誰に言うでもなく、独りごちる。
今日はなんだか、慣れないことをし過ぎたせいか、やけに疲れた。
あーでも、仕事ってことにしてあるから、早々に帰って休むわけにもいかないなあ。
本当、簡単に嘘なんてつくんじゃなかったな。どうせろくなことないんだから。
後先考えずに流れのまま送ってしまったなーちゃんへのメッセージを今になって後悔しながら、僕は教室のナンバーロックを操作して、夕日の照らす橙色の廊下を歩き出した。
~white side END~