いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~

~♪♪♪

糖度の高い完熟メロンを堪能していると、ふいに私のスマホから電話の着信音が響く。


「こら菜礼!病院ではマナーモードにしなさいって前も言ったでしょう!」

「あーごめんなさいごめんなさい!いつもはマナーモードなの!今日だけうっかり……って、誰だろ。知らない番号だ」


画面に映る発信元は、市外局番から始まる固定電話の番号のようだった。

何か急用だったらいけないと、私は祖母に一言断り病室を後にする。


「はい?もしもし、咲田ですけど……」

通話可能エリアへ移動し電話に出ると、聞き覚えのある優しい声色の女性から「もしもしー」応答があった。


『私、あおぞら動物病院、受付の森と申しますが……』

「……!あ、動物病院のスタッフさん……!」

『咲田さん、こんにちは。先日はどうも~。例の子猫ちゃんなんだけど、順調に元気になってくれておりましてー。退院の目途がついたのでご連絡しました!週明けには先生からOKが出るみたいだから、お迎えをお願いしてもいいかな?』


待ち望んだ“退院”の一言を聞き、その言葉が嬉しくて、自然と顔がほころぶ。

私は脇目も振らずに元気よく「はいっ!」と頷いて答えてしまい、清掃作業をされていた職員の方から白い目を向けられてしまった。

ご、ごめんなさいーー!と恐縮しながら声を抑え、そっと隅に寄って会話を続ける。


「わかりました。月曜日の学校帰りにすぐ伺います」

『はーい!ではお待ちしてますね。よろしくお願いしまーす』


そこで通話を切り、嬉々としながら私は、祖母の待つ病室へUターンする。


「お祖母ちゃん、聞いて~。この前メッセージで送った怪我してた子猫ちゃんが――」

「菜礼!声が大きい!ここは病院ですよ」

「ご、ごめんなさい……」


周りの患者さん方にペコペコと頭を下げてお詫びする。

ちょっと浮かれすぎてしまった。でもそのくらい、嬉しかったんだもん!


私が声量に注意しながら事の詳細を説明し終えると、祖母も自分のことのように喜んでくれた。

その後、医師が経過の確認に訪れるという時間が迫っていた祖母に「また来るねー」と挨拶をして、幸せな気分のまま病院を出た私は、鼻歌を口ずさみながら家に帰り着いた。

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