いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「ダメだよ。ペットはだーめ」
結果。
呆気なく、私の申し出は突っぱねられてしまいましたとさ。
いつも優しい聖さんにしては珍しく、黒芭くんにも引けを取らないくらいにその意志は固く頑固で、どう揺すっても折れてくれる気配がない。
「どうしても、どうしてもダメ、ですか……?」
「何度言ってもダメ。うちでペットは飼いません」
「そんなぁ……」
どうしてそんなに頑ななのかわからず、理由を問うても“ダメ”の一点張りで答えてくれない聖さんに、がくりと肩を落とす。
「あなたったらそんなに意地悪言わなくてもいいじゃない。別に猫ちゃんの1匹くらい飼ってあげればいいのに」
「凛々子さん……!」
聖さんに挽き立てのコーヒーを用意しながら、さりげなく援護射撃を入れてくれる凛々子さんには一生頭が上がらない。
それでも――
愛する奥様にお願いされたとて、聖さんの決定は覆らなかった。
家主の定めたルールに逆らうことはできず、私は泣く泣く部屋に戻ろうと踵を返す。
その落ち込みまくった背中を見てか、不憫に思ってくれたらしい聖さんが、ようやく口を開いてくれた。
「そもそもね、黒芭が首を縦に振らないんだよ。あの子は過去に、猫を助けた一件で、心に大きな傷を負っているからね」
「……え?黒芭くんが、ですか?」
「昔は動物が好きだったのに、それ以降、生き物に近付いたり触れたりもしなくなったよ。あの子の傷を思い出させるような、刺激になるようなことは避けてあげたいんだ。子を想う親心だと思って、わかってくれるね……?」
聖さんと凛々子さんには、先日の猫を助けた一連の経緯については一切口外するなと黒芭くんから忠告を受けていた。
その理由はよくわからなかったけど、私は黙って従って、例の一件について話をしていなかった。
だから聖さんは、黒芭くんが少し前に道路の脇で死にかけていた猫を保護する手助けをしてくれたことは知らない。
知らないからこそ、今の言葉があるのだと思うけれど……。
じゃあ果たして、黒芭くんが過去に助けた猫との一件によって負わされた心の傷とは、一体なんなのだろうか。
まだまだ私の知らないことの方が多すぎて、何をどこまで尋ねていいかもわからない。
とりあえずその場は聖さんに頷いて、私は部屋に戻ったのだった。