いじわる双子のお気に入り~ドタバタ☆甘キュンDAYS~
「猫の説得、失敗した?」
訊くまでもなさそうな顔で、軽く首の角度を変えながらそう尋ねる白亜くんに、私は子供じみた反応をして唇を尖らせる。
手元ではキッチンから持ってきたのか一口チョコレートの包みを開けながら、まるで片手間に話を聞き出そうとしていた彼の仕草に、私は一層不満をあらわにした。
「そういえば。上手くいかないってわかってて勧めたの?」
「あはは。そんなつもりはなかったよ。どうなるかなんて僕にもよくわからなかった」
それが嘘か本当か。なんとも言えない怪しい笑みを浮かべる彼の真意が探れずに、私は依然として不貞腐れた態度を見せる。
「拗ねないでよ」
そう笑う彼はむくれたままの私の顔を覗き込むように下から距離を詰めてきて、私は思わず顎を引きそれを制した。
「ち、近い」
「コミュニケーションだよ」
「もう普段から十分とってる」
「それは僕となーちゃんの認識の齟齬ってやつかも」
そうだね。
私もそれを思って、きっとまだまだ足りないんだなって、でも頑張ったところでそれってどうにかなるものなのかなって、答えがわからなくてちょっと項垂れてたんだもの。
そうは思っても素直にここでそれを認めるわけにもいかなくて、私は白亜くんの肩を物理的に引き剝がそうと右手を宙に浮かせた。
――が。
「……っ!ちょっと」
「捕まえちゃった」
そんな私の隙をあっさり突いて、唐突に右手の自由が奪われる。
彼の細くて美しい左手にまんまと奪取されて、私は咄嗟に逆の手に力を込めた。
けれどそれも瞬時に見抜かれて、今度は彼の空いた右手にその手首が支配される。
そのまま強制的に両の手首が彼の右手に集約される形で捕まってしまい、私は立ち上がって逃げることも叶わずに、されるがままの状態となってしまった。
「もう、いい加減に――んむっ」
さすがに黙っていられないと口を開きかけたその時。
彼の空いた片方の手によって、私の口の中に何やら黒い塊が押し込まれた。
一瞬のうちにそれは溶けて、甘い香りとくちどけが口内に広がる。