ソウルメイト~男女の親友ってあるの?

「瀬那―、隣いいか?」

瀬那は勇気の問い掛けに何も答えず、ただ、氷の入ったウイスキーグラスをいじり回していた。

「マスター、瀬那と同じの頂戴」

無愛想なマスターは返事もしない。

しばらくして瀬那の手が止まり、勇気をちらっと見ながらボソッと言った。

「よく、分かったな。ここ」

「へへー、何かあったときには、うちらはいつもここじゃん」

瀬那<達>のいつからか通っているお気に入りのショットバーである。

そして奈緒との・・・

この店は無愛想な50も過ぎてるだろうマスターが一人でやっている。

瀬那はマスターのことは詳しくは知らなかったが好きだった。

知らないから話せることも世の中にはあるのだ。

そして何が気に入ってるかというと、客が話しかけない限りはほとんど喋らないマスターだからだ。

時によっては話しかけても何も言わないマスター。

曲も生演奏なんてとんでもない。

今時、貴重なレコードがたまに回る程度なのだ。

あまりに同じ曲がずっとかかるので、客の方が気を使ってレコードをプレゼントするくらいだった。

座席はカウンターに椅子が12、その背中側にはテーブル席が3つ、ざっと24人は座れる店である。

こうして改めて数えると意外に収容できる。

しかし客は少なかった。

なぜならマスターが無愛想だから…

そう、こういう店にありがちな好き嫌いが別れる店なのだ。

店の名前はbond(絆)
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