ソウルメイト~男女の親友ってあるの?
<in one's heart・心の中で>

愛華の計らいで

瀬那にせっかく会えたあの日から、

もうずっと…

奈緒は外には出なくなっていた。

愛華とさえ

何らかの断り文句を見つけては

出かける事をしなかった。

あの居酒屋の夜から一ヵ月ほどたったある晴れた日、ただ、穏やかな日々を送っていた奈緒は、

洗濯物を干すためにベランダに出た。

日課として、リビングに飾ってある鉢植え達に水をやるためだ。

結婚記念に夫婦で買った小さな“幸福の木”は

背丈が奈緒のちょうど半分くらいになっていた。

『私の幸福も成長してるのかな』

29、秋

奈緒はふと、そんなふうに思った。

こんな風に

ずっと穏やかでいたいな。

そしてそんな言葉とは裏腹に、奈緒は毎日なにげなくポケットに忍ばせている指輪を手に取り、陽射しにかざした。

“OPEN YOUR HEART”

奈緒は小さなその文字を

指でたどり、

心の中でつぶやいた。

『…たすけて』
< 134 / 242 >

この作品をシェア

pagetop