【短編】眠り姫に口付けを。
「…私、も……ずっと前から…」
下を向かないで。
顔を見せて。
彼女の顎に手を添えて上に。
「言葉で『好き』って、言って」
「──…好…っ…好きぃ……、ずっとずっと前から…あの日からずっと…」
彼女はずっとずっと昔から僕を知っていたのに。
僕は…
そう思うと昔の僕を殺してしまいたい。
消してしまいたい。
けど消えることのない過去を受け入れることでしか、僕は前に進めない。
「ごめん…ごめんね、僕は君を傷付けてた……」
「…ううん、いいの」
彼女は僕に『愛』を語ったあの時
一体どんな気持ちだったんだろうか…?