魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

ロイスナーでの暮らし

 アマーリエとの再会を果たし、バルタザールの面前でベルンハルトと夫婦になる誓いを宣言し、結婚式はつつがなく執り行われた。
 婚約披露よりも気分を悪くせずに済んだのは、アマーリエと会えたからか、この様に晒しものにされる場はもうこれで最後だからだろうか。

 ベルンハルトが貴族たちの社交の場に参加することはほとんどない。それこそ一年に一度程度のものだ。
 ロイスナーが王都から遠いこと。
 冬場は雪で道が遮断され、領外へと出ることができないこと。
 ベルンハルト自身にその気がないこと。
 他にも取り繕った事情が山ほどあるだろうけど、ベルンハルトにその気がない、それが最も有力な事情だろう。
 貴族たちからのあんな視線と会話の中へ、誰が好んで出かけて行くものか、リーゼロッテは婚約披露と結婚式の二日間で嫌というほど思い知った。
 ロイスナーへ行けば、リーゼロッテもあんな場に出て来ずに済むようになるだろうか、そんな期待をしながら、移動の日を待った。


 ロイスナーへと移動する日は秋の匂いが更に濃くなり、吹き抜ける風に冷たさを感じるようになった頃。
 ロイエンタール家からリーゼロッテを迎え入れる準備が整ったと、連絡を受けたすぐのことだ。
 城の中庭に用意された馬車。その後ろに連なるのはいわゆる嫁入り道具たち。とはいえ、これまでリーゼロッテが身につけていたものがほとんどで、それ以外の必要なものについてはロイスナーの城で整えたらしい。
 信用できる人間のいないリーゼロッテは侍女を連れることもなく、たった一人でロイスナーの城へ乗り込んで行った。
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