魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
 その日の貴族たちの社交は、夜会が中心だったようで、まだ夜の社交界デビューすら果たしていないリーゼロッテは自室に閉じこもっていた。
 バルタザールとは昨日温室で見かけたきり顔すら合わせていない。予想通り、次に会うのは来月になるはず。
 夜会の会場から聞こえてきている音楽を遠くに感じながら、ほとんど叱られずに済んだことに満足していた。
 来月はどの様な手段で逃げ出そうか。今月とはまた別の手段で逃げ出さなければならない。
 毎月同じ手に引っかかるほど、バルタザールは甘い相手ではなく、リーゼロッテの一ヵ月はそんなことに神経を使いながら過ぎていく。

 本来であれば、社交界へのデビューも果たさなければならないはずの年齢。いくら魔法が使えないことを影で何と言われていても、年頃の王女が社交界に顔を出さないのも外聞が悪い。
 数年前に卒業した国立学院の同級生の中には、既に立派にデビューを果たし、パートナーにエスコートをされてる者もいると聞いた。
 魔法が使えないこと以外は、マナーもダンスも軽いお茶会を通して、準備は整っているはずなのに。魔法が使えないことの陰口を叩かれるリーゼロッテを不憫に思うのか、そんな王女を子供にもってしまった恥をかきたくないのか、バルタザールはリーゼロッテの社交界へのデビューをこと更に拒否した。
 まぁ、十中八九後者だけど。
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