悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
女子寮内の長い廊下を歩く。
(ああ、あそこのメイドさんのエプロン可愛い。ヘッドドレスも刺繍が細かくて素敵ね)
ふふ、と微笑みを漏らしながら、壁際で頭を下げるメイドを見つめると、気の強い性悪女で名を馳せているレベッカから嘲笑されたのだと勘違いしたメイドが、さらに深く頭を下げ肩を震わせていた。
(それにしても、このレベッカというキャラの好感度の低さはどうにかならないかしら)
ヒロインの恋敵という設定上仕方がないのかもしれないけれど、貴族で地位が高いが故に誰も注意してこないため、まるで腫れ物に触れる扱いをされ、うんざりしていた。
専門学生の時に、みんなが商品化できるような服を作る中、実用性のない原価の高く手間のかかるドレスを作っていた時と同じような、冷ややかな視線だ。
すると、廊下の向かい奥から、ピンクの髪の少女が歩いてきた。
一目で分かるその小柄でふわふわした可愛らしい雰囲気は、ゲームの正ヒロインであるリリア・ルーベルトである。
(か、可愛い……! まるでお人形さんみたい!)
細いウエストに白い肌、大きな瞳にピンクの髪。
男の人の庇護欲をくすぐる、その守ってあげたいと思わせる容姿と雰囲気に、くらくらしてしまった。
と同時に、ゲームのヘビーユーザーであるレベッカはすぐにピンと来た。
これはゲーム序盤にある、「リリアが勉強会の帰り道、レベッカに廊下で突き飛ばされる」イベントだ。
頑張り屋さんのヒロインを、嫉妬で突き飛ばす悪役令嬢にヘイトが溜まるが、それを見た王子や公爵に手を差し伸べられ、選択肢によって攻略キャラのリリアへの好感度が上がる場面。
私は別にリリアに恨みはないし、こんなか弱い子を突き飛ばすなんて出来ないわ、と、レベッカは今まさにすれ違うリリアに軽く会釈をし、通り過ぎようとした。
しかしーーー。
「きゃあ!」
小さい悲鳴をあげ、リリアが地面へと倒れ込んだ。
……ええ?
確かに少し狭い廊下とはいえ、今まさにすれ違おうとしていたレベッカとリリアは、ぶつかってはいない。
どうやら一人で足を挫いて転んだらしい。
リリアは赤い絨毯の上に倒れ込み、足を投げ出して横たわっている。
「だ、大丈夫……?」
レベッカが慌てて駆け寄るが、リリアはその大きな瞳を恐怖で染め、目を逸らしてきた。
え、なんで?
怖がられるようなこと何もしてないのに、と眉を寄せる。
間を開けて通り過ぎようとしただけで、一ミリも触れてはいないし、突き飛ばすなんてもってのほかだ。
言い訳をしようにも、リリアは恐ろしいのか目をぎゅっと瞑って下を向いている。
……ああ、きっとこれは「回避不可能イベント」なんだ。
今後どの男性キャラとの恋愛ルートを進もうとも、必ずゲーム序盤で行われる悪役令嬢からのイビリシーン。
実際前世では、何回ゲームを繰り返しても必ず行われる胸糞シーンなため、ボタンを連打してスキップしていたものだ。
転生してきて、リリアに恨みはないので手を出さなくても、勝手ににすっ転んでライバルである悪役令嬢レベッカのせいにする、という寸法なのか。
改めてこの世界での自分の好感度の低さにうんざりしてしまった。
(ああ、あそこのメイドさんのエプロン可愛い。ヘッドドレスも刺繍が細かくて素敵ね)
ふふ、と微笑みを漏らしながら、壁際で頭を下げるメイドを見つめると、気の強い性悪女で名を馳せているレベッカから嘲笑されたのだと勘違いしたメイドが、さらに深く頭を下げ肩を震わせていた。
(それにしても、このレベッカというキャラの好感度の低さはどうにかならないかしら)
ヒロインの恋敵という設定上仕方がないのかもしれないけれど、貴族で地位が高いが故に誰も注意してこないため、まるで腫れ物に触れる扱いをされ、うんざりしていた。
専門学生の時に、みんなが商品化できるような服を作る中、実用性のない原価の高く手間のかかるドレスを作っていた時と同じような、冷ややかな視線だ。
すると、廊下の向かい奥から、ピンクの髪の少女が歩いてきた。
一目で分かるその小柄でふわふわした可愛らしい雰囲気は、ゲームの正ヒロインであるリリア・ルーベルトである。
(か、可愛い……! まるでお人形さんみたい!)
細いウエストに白い肌、大きな瞳にピンクの髪。
男の人の庇護欲をくすぐる、その守ってあげたいと思わせる容姿と雰囲気に、くらくらしてしまった。
と同時に、ゲームのヘビーユーザーであるレベッカはすぐにピンと来た。
これはゲーム序盤にある、「リリアが勉強会の帰り道、レベッカに廊下で突き飛ばされる」イベントだ。
頑張り屋さんのヒロインを、嫉妬で突き飛ばす悪役令嬢にヘイトが溜まるが、それを見た王子や公爵に手を差し伸べられ、選択肢によって攻略キャラのリリアへの好感度が上がる場面。
私は別にリリアに恨みはないし、こんなか弱い子を突き飛ばすなんて出来ないわ、と、レベッカは今まさにすれ違うリリアに軽く会釈をし、通り過ぎようとした。
しかしーーー。
「きゃあ!」
小さい悲鳴をあげ、リリアが地面へと倒れ込んだ。
……ええ?
確かに少し狭い廊下とはいえ、今まさにすれ違おうとしていたレベッカとリリアは、ぶつかってはいない。
どうやら一人で足を挫いて転んだらしい。
リリアは赤い絨毯の上に倒れ込み、足を投げ出して横たわっている。
「だ、大丈夫……?」
レベッカが慌てて駆け寄るが、リリアはその大きな瞳を恐怖で染め、目を逸らしてきた。
え、なんで?
怖がられるようなこと何もしてないのに、と眉を寄せる。
間を開けて通り過ぎようとしただけで、一ミリも触れてはいないし、突き飛ばすなんてもってのほかだ。
言い訳をしようにも、リリアは恐ろしいのか目をぎゅっと瞑って下を向いている。
……ああ、きっとこれは「回避不可能イベント」なんだ。
今後どの男性キャラとの恋愛ルートを進もうとも、必ずゲーム序盤で行われる悪役令嬢からのイビリシーン。
実際前世では、何回ゲームを繰り返しても必ず行われる胸糞シーンなため、ボタンを連打してスキップしていたものだ。
転生してきて、リリアに恨みはないので手を出さなくても、勝手ににすっ転んでライバルである悪役令嬢レベッカのせいにする、という寸法なのか。
改めてこの世界での自分の好感度の低さにうんざりしてしまった。