悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
「クロード。勉強会も終わったし、ちょっと気晴らしに散歩でもしよう」
学園の庭園のベンチに座っていたら、ユリウスに声をかけられた。
試験が近いため、クラスの男子たち数人で集まって自習室で勉強をしていたのだ。
早めに終わった自分は先に庭園のベンチでユリウスを待っていたが、ついうとうとしてしまった。
「ああ。暖かい日差しが気持ちよくて、居眠りしてしまった」
「どうせ毎日遅くまで勉強してるんだろ?クロードは真面目すぎだよ」
勉強会に疲れたのか、大きく伸びをしながらユリウスが苦笑する。
立ち上がり、世間話をしながら学園内の廊下を二人で並んで歩いていたら、奥の方から女の叫び声が聞こえた。
「身の程を知りなさい……!」
甲高い声が響き、すぐ後に人影が床に倒れたのが見えた。
どうやら、叫んだ声の主は赤いロングへアーのレベッカで、床に転んだのはピンク色の髪のリリアのようだった。
どちらも学園の一年生の女子で、その見た目の華やかさから常に目を引く存在なので、知っていた。
「……喧嘩か?」
「そうみたいだな、止めてくる!」
呟くと、正義感の強いユリウスは返事をし、すぐさま二人の女子に向かって走り出した。
女子同士のいざこざに皇太子自ら首を突っ込むなんて、事態が悪化するだけではないか、と思ったが、友人は止まらない。
駆け寄ってきたユリウスの姿を見て、女子二人はハッと驚いたようだったが、ユリウスは転んだリリアの肩を支えながら起こしている。
二言三言話し、ユリウスはリリアの手を引き歩き出した。
「クロード、すまない。彼女を医務室に連れて行く!」
振り返り声をかけて来たので、俺は小さく手を挙げ了承する。
小柄なリリアの肩を抱き、ユリウスは医務室の方向へと向かっていってしまった。
残されたレベッカは、悔しそうに唇を噛んだ後、廊下の扉を開け、園庭へと出ていった。
顔を伏せ、赤い髪をなびかせ走っていく。
なぜか彼女が気になり、俺はその背を追ってしまった。
大きな木のそば、木漏れ日が落ちるベンチは、さっき俺が居眠りをしてしまった場所だ。
そこに座ったレベッカは、目に涙を溜めて俯いていた。
「……大丈夫か?」
声をかけると、レベッカは顔を上げ、驚いて俺の顔を凝視した。
無理もない。俺は学園ではユリウス以外とはほとんど話さないから、彼女とも声を交わすのは初めてだった。
レベッカの紅い瞳から、大きな涙の雫が流れ落ちたので、ポケットに入れていたハンカチを彼女に手渡す。
一瞬、手に取るか迷っていたが、小さく礼を言い受け取るレベッカ。
「隣座って良いかな」
「……構いませんわ」
ベンチの隣に腰を下ろすと、少し顔を背け、目の下の雫をハンカチで優しく拭っている。
「お恥ずかしいところを、公爵にお見せいたしました」
レベッカはそう言い、顔を再度こちらに向けた時には泣いてはいなかった。
改めて見ると、凛とした、聡明な顔立ちの少女だ。
「すまない、聞き耳立てるつもりはなかったんだが」
教室や寮から離れた場所だったので、まさか人が通りかかるとは思わなかったのだろう。
そして俺も一人だったなら、女同士の喧嘩は仲裁せず、そっと回れ右をしていたはずだ。
ふう、と息をつくと、レベッカはハンカチを握りしめた。
学園の庭園のベンチに座っていたら、ユリウスに声をかけられた。
試験が近いため、クラスの男子たち数人で集まって自習室で勉強をしていたのだ。
早めに終わった自分は先に庭園のベンチでユリウスを待っていたが、ついうとうとしてしまった。
「ああ。暖かい日差しが気持ちよくて、居眠りしてしまった」
「どうせ毎日遅くまで勉強してるんだろ?クロードは真面目すぎだよ」
勉強会に疲れたのか、大きく伸びをしながらユリウスが苦笑する。
立ち上がり、世間話をしながら学園内の廊下を二人で並んで歩いていたら、奥の方から女の叫び声が聞こえた。
「身の程を知りなさい……!」
甲高い声が響き、すぐ後に人影が床に倒れたのが見えた。
どうやら、叫んだ声の主は赤いロングへアーのレベッカで、床に転んだのはピンク色の髪のリリアのようだった。
どちらも学園の一年生の女子で、その見た目の華やかさから常に目を引く存在なので、知っていた。
「……喧嘩か?」
「そうみたいだな、止めてくる!」
呟くと、正義感の強いユリウスは返事をし、すぐさま二人の女子に向かって走り出した。
女子同士のいざこざに皇太子自ら首を突っ込むなんて、事態が悪化するだけではないか、と思ったが、友人は止まらない。
駆け寄ってきたユリウスの姿を見て、女子二人はハッと驚いたようだったが、ユリウスは転んだリリアの肩を支えながら起こしている。
二言三言話し、ユリウスはリリアの手を引き歩き出した。
「クロード、すまない。彼女を医務室に連れて行く!」
振り返り声をかけて来たので、俺は小さく手を挙げ了承する。
小柄なリリアの肩を抱き、ユリウスは医務室の方向へと向かっていってしまった。
残されたレベッカは、悔しそうに唇を噛んだ後、廊下の扉を開け、園庭へと出ていった。
顔を伏せ、赤い髪をなびかせ走っていく。
なぜか彼女が気になり、俺はその背を追ってしまった。
大きな木のそば、木漏れ日が落ちるベンチは、さっき俺が居眠りをしてしまった場所だ。
そこに座ったレベッカは、目に涙を溜めて俯いていた。
「……大丈夫か?」
声をかけると、レベッカは顔を上げ、驚いて俺の顔を凝視した。
無理もない。俺は学園ではユリウス以外とはほとんど話さないから、彼女とも声を交わすのは初めてだった。
レベッカの紅い瞳から、大きな涙の雫が流れ落ちたので、ポケットに入れていたハンカチを彼女に手渡す。
一瞬、手に取るか迷っていたが、小さく礼を言い受け取るレベッカ。
「隣座って良いかな」
「……構いませんわ」
ベンチの隣に腰を下ろすと、少し顔を背け、目の下の雫をハンカチで優しく拭っている。
「お恥ずかしいところを、公爵にお見せいたしました」
レベッカはそう言い、顔を再度こちらに向けた時には泣いてはいなかった。
改めて見ると、凛とした、聡明な顔立ちの少女だ。
「すまない、聞き耳立てるつもりはなかったんだが」
教室や寮から離れた場所だったので、まさか人が通りかかるとは思わなかったのだろう。
そして俺も一人だったなら、女同士の喧嘩は仲裁せず、そっと回れ右をしていたはずだ。
ふう、と息をつくと、レベッカはハンカチを握りしめた。