悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
「…あの子が、ユリウス様のことを『ユリウスくん』なんて呼ぶのが、目に余ったもので」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
「ユリウス様は、このテイラー王国の皇太子様。
我々とは格が違うのです。しかも異性の女子からならば敬意をこめて『ユリウス様』や『ユリウス王子』と呼ぶのが正しい」
レベッカは怒りに震えてる。
「なのにあの子ときたら、馴れ馴れしく『ユリウスくん』だなんて呼ぶんですもの。
だから直すように注意したら、『クラスメイトなんだからいいでしょ?』だなんて……」
なるほど、納得した。
リリアの生まれたルーベルト家は、彼女の父に商才があったのか、ここ数年で成り上がった伯爵止まりの貴族だ。
クラスの中でもどうも浮世離れしているのも、彼女が生まれながら貴族としての教育や礼儀を教わっていないだろうと言うのは、薄々気がついていた。
それに対して、レベッカのエイブラム家は、もう何代も前から続く名家だから、礼儀の全てを教え込まれているのだろう。
確かに、女子から皇太子のユリウスを「くん付け」など、フレンドリーといえば聞こえは良いが、常識はずれな対応である。
俺はユリウスから呼び捨てで良いと許されているが、公爵という貴族の中でも一番高い位だし、同性同士というのもある。
「理由はわかった。君は正しいが、人に手をあげるのは良くない」
なだめるように言うと、レベッカは悔しそうに顔をこちらに向けて反論した。
「そんなことしておりません! こちらを見て話すよう肩を触ろうとしたら、避けられて、彼女が自分でバランス崩して転んだんですのよ」
あくまでも、自分は突き飛ばしたりしていないと言う。
確かに、声が聞こえた時には、レベッカが手を挙げていたのと、リリアが転んでいた姿しか見てはいない。
その現場だけを見たユリウスも俺も、レベッカが突き飛ばしたのだと思ってしまった。
王子を『くん呼び』するのを止めるような正義感の強い彼女が、つまらない嘘をついているとも思えない。
「…なるほどな。信じるよ」
でも、おそらくユリウスはレベッカを酷い女だと誤解しただろうし、リリアもユリウスへ好意を持っているように思えるので、 今回の件でレベッカの心象はかなり悪くなっただろう。
「悔しいですわ。殿方は皆、リリアのようなか弱い女子の味方なのですよね」
ベンチに座り頭を下げ、悔しそうに拳を握っているレベッカ。
確かにリリアは学年で一番男子から人気だし、人見知りをしない明るい性格も好かれる要因だろう。
「どうかな…好みによるとは思うが」
女子にしては背が高く、凛とした顔立ちのレベッカは、確かにか弱いとは無縁な雰囲気だ。
しかし、授業でも積極的に発言し、リーダーシップを取る様子は事なかれ主義の自分からしたら憧れるところだが。
うっかり弱音を吐いてしまったと思ったのだろう、レベッカははっとして顔を上げると、立ち上がった。
「公爵にお恥ずかしいところをお見せしましたわ。こちらは、後日洗って返します」
「ああ」
貸した白いハンカチを丁寧に手にもち、深く礼をするレベッカ。
「失礼致します」
そうして、陽の光を受け輝く赤く長い髪を揺らし、レベッカ・エイブラム嬢は去っていった。
俺が初めて彼女と話をした日だった。
「え?」
思わず聞き返してしまった。
「ユリウス様は、このテイラー王国の皇太子様。
我々とは格が違うのです。しかも異性の女子からならば敬意をこめて『ユリウス様』や『ユリウス王子』と呼ぶのが正しい」
レベッカは怒りに震えてる。
「なのにあの子ときたら、馴れ馴れしく『ユリウスくん』だなんて呼ぶんですもの。
だから直すように注意したら、『クラスメイトなんだからいいでしょ?』だなんて……」
なるほど、納得した。
リリアの生まれたルーベルト家は、彼女の父に商才があったのか、ここ数年で成り上がった伯爵止まりの貴族だ。
クラスの中でもどうも浮世離れしているのも、彼女が生まれながら貴族としての教育や礼儀を教わっていないだろうと言うのは、薄々気がついていた。
それに対して、レベッカのエイブラム家は、もう何代も前から続く名家だから、礼儀の全てを教え込まれているのだろう。
確かに、女子から皇太子のユリウスを「くん付け」など、フレンドリーといえば聞こえは良いが、常識はずれな対応である。
俺はユリウスから呼び捨てで良いと許されているが、公爵という貴族の中でも一番高い位だし、同性同士というのもある。
「理由はわかった。君は正しいが、人に手をあげるのは良くない」
なだめるように言うと、レベッカは悔しそうに顔をこちらに向けて反論した。
「そんなことしておりません! こちらを見て話すよう肩を触ろうとしたら、避けられて、彼女が自分でバランス崩して転んだんですのよ」
あくまでも、自分は突き飛ばしたりしていないと言う。
確かに、声が聞こえた時には、レベッカが手を挙げていたのと、リリアが転んでいた姿しか見てはいない。
その現場だけを見たユリウスも俺も、レベッカが突き飛ばしたのだと思ってしまった。
王子を『くん呼び』するのを止めるような正義感の強い彼女が、つまらない嘘をついているとも思えない。
「…なるほどな。信じるよ」
でも、おそらくユリウスはレベッカを酷い女だと誤解しただろうし、リリアもユリウスへ好意を持っているように思えるので、 今回の件でレベッカの心象はかなり悪くなっただろう。
「悔しいですわ。殿方は皆、リリアのようなか弱い女子の味方なのですよね」
ベンチに座り頭を下げ、悔しそうに拳を握っているレベッカ。
確かにリリアは学年で一番男子から人気だし、人見知りをしない明るい性格も好かれる要因だろう。
「どうかな…好みによるとは思うが」
女子にしては背が高く、凛とした顔立ちのレベッカは、確かにか弱いとは無縁な雰囲気だ。
しかし、授業でも積極的に発言し、リーダーシップを取る様子は事なかれ主義の自分からしたら憧れるところだが。
うっかり弱音を吐いてしまったと思ったのだろう、レベッカははっとして顔を上げると、立ち上がった。
「公爵にお恥ずかしいところをお見せしましたわ。こちらは、後日洗って返します」
「ああ」
貸した白いハンカチを丁寧に手にもち、深く礼をするレベッカ。
「失礼致します」
そうして、陽の光を受け輝く赤く長い髪を揺らし、レベッカ・エイブラム嬢は去っていった。
俺が初めて彼女と話をした日だった。