悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
そして最悪な事態が訪れた。
「私、ユリウス・テイラーは、リリア・ルーベルト嬢と婚約する!」
年に一度の舞踏会。
学園に通う貴族の令息、令嬢たちは、皇太子の唐突な宣言に目を丸くした。
* * *
友人のユリウスは、転んだリリアを助けた一件以来、リリアのことを気に入っていた。
何かにつけて彼女の世話を焼いていたし、リリアも嬉しそうだったため、クラスではリリアがユリウスの恋人になるのではないかともてはやされていた。
舞踏会で踊るパートナーにリリアを誘ってOKをもらったというのも、ランチの時間にユリウスが嬉々として報告してきた。
良かったな、と相槌を打つと、楽しみで仕方がない、絶対にリリアに告白すると笑うユリウス。
「クロードは誰かと踊らないのか?」
「…俺は、あまりああいう華やかな場は得意ではない」
頭の端では、レベッカを誘いたいという気持ちはあったが、うまくエスコートできる自信もなかったし、ユリウスに好意があるはずの彼女を誘い、断られるのが怖かった。
学園中が浮き足だった雰囲気も苦手で、早く終われば良いのに、と手元の本を読む。
* * *
「嬉しい、私もユリウス様をお慕いしております…!」
荘厳な広間での舞踏会にてユリウスと踊った、ピンク色のフリルのドレスを着たリリアは、 突然のプロポーズにも笑顔で了承した。
壁に寄りかかり腕を組み、ぼんやりとダンスパーティを眺めていた俺は、あまりの展開の速さに驚く。
ユリウスとリリアは見つめ合い、手を握る。
すると、自然と拍手が巻き起こった。
お似合いだ、素敵なカップルだと皆は口々に言い、温かい空気が広間全体を包み込む。
思い立ったらすぐ行動するのユリウスらしい状況に、苦笑しながら俺も拍手をした。
「そしてもう一つ、やらねばならないことがある」
リリアとそっと手を離したユリウスは、姿勢を変えた。
会場の端で、所在なさげに立っていた、赤いドレスの少女を睨みつける。
「レベッカ・エイブラム。
お前を皇太子妃への不敬罪とし、追放令に処す!」
まるで重罪人のような罪状を、ユリウスは高らかに叫ぶ。
「――な、何を」
思わず、乾いた声が出てしまった。
祝福ムードだった会場が一変、張り詰めた空気が流れる。
「リリアはたった今から私の婚約者、ひいては皇太子妃だ。そんな彼女をずっといじめてきたお前と、同じ学園になど通わせるなど危険で仕方がない」
信じられないと、驚愕の表情を浮かべるレベッカの視線から逃げるように、リリアはユリウスの背に隠れる。
まるで悲劇のヒロインのような仕草に、怒りが込み上げてくる。
確かに、レベッカはリリアを突き飛ばしたし、いつも睨んでいたわ、恐ろしい、と他の生徒たちも口々に話し出す。
皇太子のユリウスに馴れ馴れしく話しかけたリリアを咎めただけで、暴力を振るったわけでもないのに。
「エイブラム家を、北方の開拓地へ追放する!」
この国の次期皇帝、皇太子の一言は、逆らうことも抗うこともできない。
レベッカは、金髪に碧色の瞳のユリウスと、その横に寄り添うリリアの二人をじっと見つめた後、ある種諦めに似た笑みを浮かべた。
「……お受けいたします。ユリウス皇太子殿下」
そう言い、真紅のドレスの裾をつまみ、優雅に礼をしたのだった。
「私、ユリウス・テイラーは、リリア・ルーベルト嬢と婚約する!」
年に一度の舞踏会。
学園に通う貴族の令息、令嬢たちは、皇太子の唐突な宣言に目を丸くした。
* * *
友人のユリウスは、転んだリリアを助けた一件以来、リリアのことを気に入っていた。
何かにつけて彼女の世話を焼いていたし、リリアも嬉しそうだったため、クラスではリリアがユリウスの恋人になるのではないかともてはやされていた。
舞踏会で踊るパートナーにリリアを誘ってOKをもらったというのも、ランチの時間にユリウスが嬉々として報告してきた。
良かったな、と相槌を打つと、楽しみで仕方がない、絶対にリリアに告白すると笑うユリウス。
「クロードは誰かと踊らないのか?」
「…俺は、あまりああいう華やかな場は得意ではない」
頭の端では、レベッカを誘いたいという気持ちはあったが、うまくエスコートできる自信もなかったし、ユリウスに好意があるはずの彼女を誘い、断られるのが怖かった。
学園中が浮き足だった雰囲気も苦手で、早く終われば良いのに、と手元の本を読む。
* * *
「嬉しい、私もユリウス様をお慕いしております…!」
荘厳な広間での舞踏会にてユリウスと踊った、ピンク色のフリルのドレスを着たリリアは、 突然のプロポーズにも笑顔で了承した。
壁に寄りかかり腕を組み、ぼんやりとダンスパーティを眺めていた俺は、あまりの展開の速さに驚く。
ユリウスとリリアは見つめ合い、手を握る。
すると、自然と拍手が巻き起こった。
お似合いだ、素敵なカップルだと皆は口々に言い、温かい空気が広間全体を包み込む。
思い立ったらすぐ行動するのユリウスらしい状況に、苦笑しながら俺も拍手をした。
「そしてもう一つ、やらねばならないことがある」
リリアとそっと手を離したユリウスは、姿勢を変えた。
会場の端で、所在なさげに立っていた、赤いドレスの少女を睨みつける。
「レベッカ・エイブラム。
お前を皇太子妃への不敬罪とし、追放令に処す!」
まるで重罪人のような罪状を、ユリウスは高らかに叫ぶ。
「――な、何を」
思わず、乾いた声が出てしまった。
祝福ムードだった会場が一変、張り詰めた空気が流れる。
「リリアはたった今から私の婚約者、ひいては皇太子妃だ。そんな彼女をずっといじめてきたお前と、同じ学園になど通わせるなど危険で仕方がない」
信じられないと、驚愕の表情を浮かべるレベッカの視線から逃げるように、リリアはユリウスの背に隠れる。
まるで悲劇のヒロインのような仕草に、怒りが込み上げてくる。
確かに、レベッカはリリアを突き飛ばしたし、いつも睨んでいたわ、恐ろしい、と他の生徒たちも口々に話し出す。
皇太子のユリウスに馴れ馴れしく話しかけたリリアを咎めただけで、暴力を振るったわけでもないのに。
「エイブラム家を、北方の開拓地へ追放する!」
この国の次期皇帝、皇太子の一言は、逆らうことも抗うこともできない。
レベッカは、金髪に碧色の瞳のユリウスと、その横に寄り添うリリアの二人をじっと見つめた後、ある種諦めに似た笑みを浮かべた。
「……お受けいたします。ユリウス皇太子殿下」
そう言い、真紅のドレスの裾をつまみ、優雅に礼をしたのだった。