悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
次の日教室に行くと、女子同士のグループで楽しげに話すレベッカの姿が目に入った。
ほっと胸を撫で下ろす。
どうやらリリアが転ばなかったおかげで、今回はレベッカの悪い噂は流れなかったようだ。
結末を知っていたから、少し手を差し伸ばしただけで、こんなにも現実が変わるとは思わなかった。
放課後、教師に呼ばれたので話をし、一旦教室に戻ると、がらんとした教室に一つだけ人影があった。
夕陽が差し込む教室で、座っている女子の後ろ姿。
あれは、まさかレベッカ……!
近づくと、その人物は足音に気が付き振り向いた。
「クロードくん! 荷物がまだあったから、戻ってくると思ったんだ」
振り返ったのは、肩まであるピンクの髪を揺らした、リリアだった。
何故、リリアがここに。
訝しげに黙り込んだ俺の前に駆け寄り、微笑んだ。
「私、クロードくんに改めてお礼がしたかったの。昨日は、助けてくれてありがとう」
そう言って、小柄な体を折り頭を下げた。
「……ああ、別に気にしなくていい」
落胆した気持ちを悟られないように返事をする。
それと同時に、呼び方が気になった。
レベッカが皇太子であるユリウスを「くん付け」しているのを咎めたと言っていたが、いつの間にか親しくない俺のことも馴れ馴れしく呼んでいる。
「悪いが、俺をそんな風に呼ぶのはやめてくれるか」
素直に伝えると、リリアは驚いたようだ。
「ご、ごめんなさい。私、クロードくんと仲良くなりたくて……。
こういう風に呼んで、男子に怒られたことなかったし……」
上目遣いで、大きな瞳を俺に向けてくる。
確かに、彼女に親しげに名前を呼ばれ、嫌がるクラスメイトはいないだろう。
貴族階級の上下など関係ないと、フレンドリーと無礼を履き違えているリリアは首を傾げる。
一体なんだ、何が目的だ?
容姿に恵まれていることを分かり切っている仕草に、思わず眉根を寄せると、くん付けを嫌がられているのだと察したリリアは咳払いをし、本題を言った。
「クロード様、私と今度の舞踏会、踊ってくれませんか?」
予想だにしない言葉だった。
「……は?」
情けない疑問符が口から出た。
「私、ダンスは得意なんです。ぜひクロード様にパートナーになってもらいたくて!」
まさかのリリアからの誘いに、了承する理由がない。
「…俺は、ダンスは苦手でな。
他を当たってくれ。君なら、相手はいくらでもいるだろう」
少し嫌味が過ぎただろうか。
机の荷物をまとめて、すぐに去ろうと彼女を背にして歩き出す。
しかし、背中から声がかかった。
「嘘ですよね。クロード様は幼い頃からダンスの訓練をしていて、とても上手だとお聞きましたよ?」
リリアの声に、教室を出る足が止まる。
確かに、ダンスが苦手なのは誘いを断る方便で、公爵家に生まれたのでその程度は当たり前に教えられている。
「――誰に?」
振り返り問うと、
「クロード様のご両親にです」
リリアは夕焼けに照らされた姿で、ゆっくりと微笑んだ。
彼女の生まれたルーベルト家は、商才のある父親のおかげで最近成り上がり、伯爵の地位を手にしたばかりだ。
それゆえに昔からの由緒正しき家系には丁寧な挨拶や季節の贈り物を欠かさず、親世代からの評判は上々だと聞いたことがある。
転びそうな彼女を救ってからたった数日だと言うのに、もうそこまで根回しをしたと言うのか?
「舞踏会、楽しみに待っていますね!」
有無を言わさぬ言葉を放ったリリアは、俺への好意で頬が赤く染まっていた。
ほっと胸を撫で下ろす。
どうやらリリアが転ばなかったおかげで、今回はレベッカの悪い噂は流れなかったようだ。
結末を知っていたから、少し手を差し伸ばしただけで、こんなにも現実が変わるとは思わなかった。
放課後、教師に呼ばれたので話をし、一旦教室に戻ると、がらんとした教室に一つだけ人影があった。
夕陽が差し込む教室で、座っている女子の後ろ姿。
あれは、まさかレベッカ……!
近づくと、その人物は足音に気が付き振り向いた。
「クロードくん! 荷物がまだあったから、戻ってくると思ったんだ」
振り返ったのは、肩まであるピンクの髪を揺らした、リリアだった。
何故、リリアがここに。
訝しげに黙り込んだ俺の前に駆け寄り、微笑んだ。
「私、クロードくんに改めてお礼がしたかったの。昨日は、助けてくれてありがとう」
そう言って、小柄な体を折り頭を下げた。
「……ああ、別に気にしなくていい」
落胆した気持ちを悟られないように返事をする。
それと同時に、呼び方が気になった。
レベッカが皇太子であるユリウスを「くん付け」しているのを咎めたと言っていたが、いつの間にか親しくない俺のことも馴れ馴れしく呼んでいる。
「悪いが、俺をそんな風に呼ぶのはやめてくれるか」
素直に伝えると、リリアは驚いたようだ。
「ご、ごめんなさい。私、クロードくんと仲良くなりたくて……。
こういう風に呼んで、男子に怒られたことなかったし……」
上目遣いで、大きな瞳を俺に向けてくる。
確かに、彼女に親しげに名前を呼ばれ、嫌がるクラスメイトはいないだろう。
貴族階級の上下など関係ないと、フレンドリーと無礼を履き違えているリリアは首を傾げる。
一体なんだ、何が目的だ?
容姿に恵まれていることを分かり切っている仕草に、思わず眉根を寄せると、くん付けを嫌がられているのだと察したリリアは咳払いをし、本題を言った。
「クロード様、私と今度の舞踏会、踊ってくれませんか?」
予想だにしない言葉だった。
「……は?」
情けない疑問符が口から出た。
「私、ダンスは得意なんです。ぜひクロード様にパートナーになってもらいたくて!」
まさかのリリアからの誘いに、了承する理由がない。
「…俺は、ダンスは苦手でな。
他を当たってくれ。君なら、相手はいくらでもいるだろう」
少し嫌味が過ぎただろうか。
机の荷物をまとめて、すぐに去ろうと彼女を背にして歩き出す。
しかし、背中から声がかかった。
「嘘ですよね。クロード様は幼い頃からダンスの訓練をしていて、とても上手だとお聞きましたよ?」
リリアの声に、教室を出る足が止まる。
確かに、ダンスが苦手なのは誘いを断る方便で、公爵家に生まれたのでその程度は当たり前に教えられている。
「――誰に?」
振り返り問うと、
「クロード様のご両親にです」
リリアは夕焼けに照らされた姿で、ゆっくりと微笑んだ。
彼女の生まれたルーベルト家は、商才のある父親のおかげで最近成り上がり、伯爵の地位を手にしたばかりだ。
それゆえに昔からの由緒正しき家系には丁寧な挨拶や季節の贈り物を欠かさず、親世代からの評判は上々だと聞いたことがある。
転びそうな彼女を救ってからたった数日だと言うのに、もうそこまで根回しをしたと言うのか?
「舞踏会、楽しみに待っていますね!」
有無を言わさぬ言葉を放ったリリアは、俺への好意で頬が赤く染まっていた。