悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
じれったい日々が続き、少し焦りが出てきた頃。
廊下を歩いていたら、フラフラとした人影が見えた。
何やらダンスのステップを踏んでいるらしい、レベッカの姿だった。
「いち、に、のさーん、でターンして……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、熱心に練習をしているようだ。
足元はおぼつかないし、姿勢は悪く、腕は伸びていない、ぎこちない様子だ。
背後の俺に気がつくことなく、目が回らないか心配になる程、くるくるとターンしている。
「くるっと回って…っきゃあ!」
危ない、と思った時には体が勝手に動いていた。
体勢を崩したレベッカに腕を伸ばし、その腰を咄嗟に支える。
レベッカは転ぶと思ったのか、体をこわばらせ目を閉じていたが、恐る恐る顔を上げた。
至近距離で、目が合う。
「まったく。君たちは廊下で転ぶことが決まりなのか?」
もっとスマートなことが言えれば良いのに。
事実、腕の中のレベッカは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして謝ってきた。
もっと女性に気を遣わせないような言い方ができれば、と軽く自己嫌悪に陥る。
そっと体を起こしてあげると、レベッカの髪から甘い香りがした。
なぜ廊下でダンスをしていたのか聞くと、リリアがドレスを作るお礼に教えてくれたのだという。
一体、レベッカはどの男と踊るつもりなのだろう。
ユリウスはリリアを誘って成功したと言っていたし、他の誰と?
新しい運命の分岐が始まったのかと、内心がざわつき、奥歯を噛み締める。
俺の不機嫌な様子を訝しみながら、レベッカはダンスは苦手だと弱音を漏らす。
「男がうまければ、女性もステップを踏める。……手を」
嫉妬心に駆られた俺は、レベッカの細い手を取り、ワンステップ踊ってみる。
ライネス家の三男として恥を晒すなと、物心ついた時から徹底的に叩き込まれたダンスの技術。
くるりと一回転したレベッカは、呆然と俺のことを見上げてくる。
「こういうことだ。良いパートナーを見つけるといい」
どうせ俺は選ばれないという自虐心と、一体どの男がレベッカを誘ったんだという嫉妬心で、うまく笑えなかった。
* * *
舞踏会が近づき、学園の雰囲気は日に日に浮き足立っていく。
皆、ドレスの準備やパートナー探しで忙しいようだ。
放課後の喧騒の中、一人静かに考え事がしたかったので、最上階の一番奥の図書室へと向かう。
誰もいない図書室の奥の机にノートを広げ、頭の中を整理するようにメモを書き込んでいく。
ユリウスとリリアはお互い好意を持っており、舞踏会でおそらくユリウスがプロポーズする。
レベッカがリリアに靴を送ったことで二人の仲は良く、今回悪い噂は流れていない。
そこに『リリアとユリウスに嫌われていない→追放令は出ない?』と書き込む。
黒いペンで、次々と書き込んでいく。
『今までで一番良い展開』、『二度と繰り返さない』、『レベッカを守る』とペンを走らせていく。
その下に『レベッカの舞踏会のパートナーは?』と書き、動きを止めた。
文字に視線を落とし、考える。
無邪気に笑うレベッカの横顔。
服を作るのが好きで、ダンスは苦手で、俺にも気さくに話しかけてくる。
気高きエイブラム家の一人娘の第一印象とは、だいぶ違う。
俺は『レベッカ』という字を丸で囲むと、線を引っ張る。
そしてそこに、『別人?』と書き込んだ。
廊下を歩いていたら、フラフラとした人影が見えた。
何やらダンスのステップを踏んでいるらしい、レベッカの姿だった。
「いち、に、のさーん、でターンして……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、熱心に練習をしているようだ。
足元はおぼつかないし、姿勢は悪く、腕は伸びていない、ぎこちない様子だ。
背後の俺に気がつくことなく、目が回らないか心配になる程、くるくるとターンしている。
「くるっと回って…っきゃあ!」
危ない、と思った時には体が勝手に動いていた。
体勢を崩したレベッカに腕を伸ばし、その腰を咄嗟に支える。
レベッカは転ぶと思ったのか、体をこわばらせ目を閉じていたが、恐る恐る顔を上げた。
至近距離で、目が合う。
「まったく。君たちは廊下で転ぶことが決まりなのか?」
もっとスマートなことが言えれば良いのに。
事実、腕の中のレベッカは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして謝ってきた。
もっと女性に気を遣わせないような言い方ができれば、と軽く自己嫌悪に陥る。
そっと体を起こしてあげると、レベッカの髪から甘い香りがした。
なぜ廊下でダンスをしていたのか聞くと、リリアがドレスを作るお礼に教えてくれたのだという。
一体、レベッカはどの男と踊るつもりなのだろう。
ユリウスはリリアを誘って成功したと言っていたし、他の誰と?
新しい運命の分岐が始まったのかと、内心がざわつき、奥歯を噛み締める。
俺の不機嫌な様子を訝しみながら、レベッカはダンスは苦手だと弱音を漏らす。
「男がうまければ、女性もステップを踏める。……手を」
嫉妬心に駆られた俺は、レベッカの細い手を取り、ワンステップ踊ってみる。
ライネス家の三男として恥を晒すなと、物心ついた時から徹底的に叩き込まれたダンスの技術。
くるりと一回転したレベッカは、呆然と俺のことを見上げてくる。
「こういうことだ。良いパートナーを見つけるといい」
どうせ俺は選ばれないという自虐心と、一体どの男がレベッカを誘ったんだという嫉妬心で、うまく笑えなかった。
* * *
舞踏会が近づき、学園の雰囲気は日に日に浮き足立っていく。
皆、ドレスの準備やパートナー探しで忙しいようだ。
放課後の喧騒の中、一人静かに考え事がしたかったので、最上階の一番奥の図書室へと向かう。
誰もいない図書室の奥の机にノートを広げ、頭の中を整理するようにメモを書き込んでいく。
ユリウスとリリアはお互い好意を持っており、舞踏会でおそらくユリウスがプロポーズする。
レベッカがリリアに靴を送ったことで二人の仲は良く、今回悪い噂は流れていない。
そこに『リリアとユリウスに嫌われていない→追放令は出ない?』と書き込む。
黒いペンで、次々と書き込んでいく。
『今までで一番良い展開』、『二度と繰り返さない』、『レベッカを守る』とペンを走らせていく。
その下に『レベッカの舞踏会のパートナーは?』と書き、動きを止めた。
文字に視線を落とし、考える。
無邪気に笑うレベッカの横顔。
服を作るのが好きで、ダンスは苦手で、俺にも気さくに話しかけてくる。
気高きエイブラム家の一人娘の第一印象とは、だいぶ違う。
俺は『レベッカ』という字を丸で囲むと、線を引っ張る。
そしてそこに、『別人?』と書き込んだ。