悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
五度目の舞踏会当日がやってきた。
ドアボーイが重厚な扉を開き、シャンデリアのまばゆい光が視界に入ってくる。
バイオリンやハープの生演奏が響き、 色とりどりのドレスを着た少女たちが色めき立っている。
ここまで全て同じだ。違うのは、俺が着ているのがダークネイビーのタキシードだというところだけ。
ユリウスはキョロキョロと辺りを見渡していたが、目当ての人物であるリリアを見つけると、颯爽と駆け寄った。
リリアはいつも自分の髪の色と同じピンク色のフリルドレスを着ていたはずだが、今日はラベンダー色の上品なドレスを着ている。
レベッカがパーソナルカラーに合わせて作った服だろう。実際、格段に似合っていた。
ユリウスがリリアをダンスに誘うのを見ていたレベッカは、成功したのを見て嬉しそうに拍手をしていた。
他人の幸せを自分のことのように喜べる、素直な心根の持ち主だ。
彼女のそばにそっと近づく。
「……やれやれ、さすが目を引く二人だな」
「クロード様、その服着てくださったのですね!」
無邪気に笑う彼女に、ああ、と頷く。
俺にとって一番目を引いて、一番美しいのは君だ。
いつも着ていた赤いドレスではなく、黒のレースのマーメイドドレスはすごく似合っていた。
上品かつ妖艶で、細い肩を出しているため目のやり場に困ってしまう。
演奏が再び流れ始める。
ユリウスとリリアのダンスを見つめながら、目をキラキラと輝かせているレベッカ。
その横顔を眺めながら、思う。
君は、ドレスやタキシードを作って、少しずつ運命を変えてくれた。
今の所考えられる限り、最善の道を辿っている。
一体、君は誰なんだ?
本当にレベッカなのか?
「――クロード様は、誰かと踊らないんですか?」
俺の心を見透かしたように、レベッカはいつもより低い声で尋ねてきた。
踊る相手などいない。
「あいにく、ダンスが苦手で」
社交界で誘われた際に断る体裁のいい台詞だった。
「…嘘、ですよね。この前廊下で転んだ私を支えて、優雅に踊れていたではないですか」
彼女はダンスフロアから視線を外し、俺を見上げていた。
恥ずかしさに潤んだ、大きな紅い瞳。
「私、服ばっかり作っていたんで、誰からも誘われなかったんです。
ダンス、披露する機会がなくて、もったいないな、なんて…」
綺麗な赤いマニュキュアを塗った、細い指が震えていた。
俺はといえば、目の前で言われたことに理解が追いつかず、ただ茫然と突っ立っているだけだ。
彼女が俺をダンスのパートナーに誘ってくれている?
「……すまない、女性にそこまで言わせてしまって」
意中の人も誘えない、自信の無い男ははもう卒業しよう。
「俺と踊ってくれないか?レベッカ・エイブラム嬢」
俺が差し出した手に、そっと手を添え微笑むレベッカ。
「喜んで、クロード・ライネル公爵」
夢なら醒めなければ良いのに。
このまま、もう二度とやり直したくなんてない。
ドアボーイが重厚な扉を開き、シャンデリアのまばゆい光が視界に入ってくる。
バイオリンやハープの生演奏が響き、 色とりどりのドレスを着た少女たちが色めき立っている。
ここまで全て同じだ。違うのは、俺が着ているのがダークネイビーのタキシードだというところだけ。
ユリウスはキョロキョロと辺りを見渡していたが、目当ての人物であるリリアを見つけると、颯爽と駆け寄った。
リリアはいつも自分の髪の色と同じピンク色のフリルドレスを着ていたはずだが、今日はラベンダー色の上品なドレスを着ている。
レベッカがパーソナルカラーに合わせて作った服だろう。実際、格段に似合っていた。
ユリウスがリリアをダンスに誘うのを見ていたレベッカは、成功したのを見て嬉しそうに拍手をしていた。
他人の幸せを自分のことのように喜べる、素直な心根の持ち主だ。
彼女のそばにそっと近づく。
「……やれやれ、さすが目を引く二人だな」
「クロード様、その服着てくださったのですね!」
無邪気に笑う彼女に、ああ、と頷く。
俺にとって一番目を引いて、一番美しいのは君だ。
いつも着ていた赤いドレスではなく、黒のレースのマーメイドドレスはすごく似合っていた。
上品かつ妖艶で、細い肩を出しているため目のやり場に困ってしまう。
演奏が再び流れ始める。
ユリウスとリリアのダンスを見つめながら、目をキラキラと輝かせているレベッカ。
その横顔を眺めながら、思う。
君は、ドレスやタキシードを作って、少しずつ運命を変えてくれた。
今の所考えられる限り、最善の道を辿っている。
一体、君は誰なんだ?
本当にレベッカなのか?
「――クロード様は、誰かと踊らないんですか?」
俺の心を見透かしたように、レベッカはいつもより低い声で尋ねてきた。
踊る相手などいない。
「あいにく、ダンスが苦手で」
社交界で誘われた際に断る体裁のいい台詞だった。
「…嘘、ですよね。この前廊下で転んだ私を支えて、優雅に踊れていたではないですか」
彼女はダンスフロアから視線を外し、俺を見上げていた。
恥ずかしさに潤んだ、大きな紅い瞳。
「私、服ばっかり作っていたんで、誰からも誘われなかったんです。
ダンス、披露する機会がなくて、もったいないな、なんて…」
綺麗な赤いマニュキュアを塗った、細い指が震えていた。
俺はといえば、目の前で言われたことに理解が追いつかず、ただ茫然と突っ立っているだけだ。
彼女が俺をダンスのパートナーに誘ってくれている?
「……すまない、女性にそこまで言わせてしまって」
意中の人も誘えない、自信の無い男ははもう卒業しよう。
「俺と踊ってくれないか?レベッカ・エイブラム嬢」
俺が差し出した手に、そっと手を添え微笑むレベッカ。
「喜んで、クロード・ライネル公爵」
夢なら醒めなければ良いのに。
このまま、もう二度とやり直したくなんてない。