悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
「わあ……綺麗なお花……!」
宮廷の庭を歩きながら、レベッカは思わず声をあげてしまった。
そこはとても美しい色とりどりの花が咲いており、本当におとぎ話の中のようだった。
ピンク色の可愛らしい花が咲いていたので、レベッカはしゃがんでその花びらを優しく撫でる。
「全国からさまざまな種類の植物の種を取り寄せているらしい。珍しい種類もあるそうだ」
黄色や赤や紫の、カラフルな花を見て、クロードは少し口角を上げた。
クロードは頭脳明晰で、経済学や政治学などの勉強はトップで、将来有望と言われている。
しかし花の種類などは詳しくないのかもしれない。
息を吸うと、甘い香りで胸がいっぱいになる。
そういえば前世は仕事が忙しいし、感染症の流行でなかなか外出もできず、自然の豊かな場所に来るなんていつ以来だろう、とレベッカは思った。
ゆっくりと立ち上がり、クロードの横に並び歩く。
それにしても、改めて眺めると、とんでもないイケメンである。
サラサラの銀髪、同じ色の長いまつ毛に、透けるような白い肌。
鼻筋は高くすっと通り、特徴的な蒼い瞳も素敵だ。
しかも恐ろしいほどに顔が小さく、足の股下は長い。
八頭身? もしかしたら九頭身かもしれない。
そして貴族というハイスペックときた。
前世だったら絶対に隣を歩くことなどできない、一級イケメンの横顔を盗み見て、密かに胸を躍らせていた。
とはいえ、自分も赤いロングヘアーに桜色の薄い唇、キリっとした顔立ちの美女なのだから、自信持たねばと背筋を伸ばす。
側から見たら美男美女のお似合いな二人に見えるんじゃないかしら、と思いつつ、自分は悪役令嬢で、あくまでもヒロインのリリアの引き立て役なのだから、クロードとは縁がないのだろうと残念にも思う。
クロードは、「冷徹公爵」と噂されているように、クールで何を考えているかわからないミステリアスなキャラだった。
しかしそれゆえに、彼の攻略ルートに入ってからのデレっぷりのギャップが素晴らしく、世の女子プレイヤーたちがもれなく悶絶する、人気キャラである。
風が吹き、彼の柔らかな銀髪を揺らす。
花びらがその銀髪についていたので、レベッカはすかさず彼に近づき、細い指をそっと額へと伸ばした。
「なっ、なんだ」
急に至近距離に来られて驚いたのか、クロードは少し後ずさる。
「ああ、驚かせて申し訳ございません。
花びらが前髪についておりましたので」
レベッカはピンク色の花びらを見せ、ふう、と息を吹いた。
「……なんだか、本当に別人みたいだな、君は」
急に近づいてきて少し照れたのか、クロードはレベッカから顔を背けた。
「そんなに違いますか?」
「ああ、昨日までの君は、何かあれば甲高い声でキーキーと文句を言っていたし、使用人たちも顎で使っていたし、皇太子のユリウスしか目になくて、俺の存在など目に入っていなかったからな」
「うっ」
長年の恨みつらみが溜まっていたのか、クロードは実に雄弁にレベッカへの不満を語った。
まあ、確かに高飛車でわがままなのが公式設定なので仕方がない。
「わ、私も態度を改めようと思いまして、淑女たるや謙虚に優雅に振る舞わねばですよね、うふふふ」
上司に毎日ペコペコしていた、事なかれ主義で通っていた社畜が、転生先で急に傲慢な態度を取れるわけがない。
せいぜい語尾をお嬢様言葉にするぐらいだと冷や汗をかきながら、会釈をする。
「なんだか新鮮だな。昨日の自分に、明日レベッカと二人で庭園を散歩するぞと言っても、信じないだろう」
冷徹公爵は珍しく冗談を言って、見惚れるほどの微笑みを浮かべた。
咲き誇る花たちも嫉妬するほどの、完璧なる美形っぷりにレベッカはめまいがした。
宮廷の庭を歩きながら、レベッカは思わず声をあげてしまった。
そこはとても美しい色とりどりの花が咲いており、本当におとぎ話の中のようだった。
ピンク色の可愛らしい花が咲いていたので、レベッカはしゃがんでその花びらを優しく撫でる。
「全国からさまざまな種類の植物の種を取り寄せているらしい。珍しい種類もあるそうだ」
黄色や赤や紫の、カラフルな花を見て、クロードは少し口角を上げた。
クロードは頭脳明晰で、経済学や政治学などの勉強はトップで、将来有望と言われている。
しかし花の種類などは詳しくないのかもしれない。
息を吸うと、甘い香りで胸がいっぱいになる。
そういえば前世は仕事が忙しいし、感染症の流行でなかなか外出もできず、自然の豊かな場所に来るなんていつ以来だろう、とレベッカは思った。
ゆっくりと立ち上がり、クロードの横に並び歩く。
それにしても、改めて眺めると、とんでもないイケメンである。
サラサラの銀髪、同じ色の長いまつ毛に、透けるような白い肌。
鼻筋は高くすっと通り、特徴的な蒼い瞳も素敵だ。
しかも恐ろしいほどに顔が小さく、足の股下は長い。
八頭身? もしかしたら九頭身かもしれない。
そして貴族というハイスペックときた。
前世だったら絶対に隣を歩くことなどできない、一級イケメンの横顔を盗み見て、密かに胸を躍らせていた。
とはいえ、自分も赤いロングヘアーに桜色の薄い唇、キリっとした顔立ちの美女なのだから、自信持たねばと背筋を伸ばす。
側から見たら美男美女のお似合いな二人に見えるんじゃないかしら、と思いつつ、自分は悪役令嬢で、あくまでもヒロインのリリアの引き立て役なのだから、クロードとは縁がないのだろうと残念にも思う。
クロードは、「冷徹公爵」と噂されているように、クールで何を考えているかわからないミステリアスなキャラだった。
しかしそれゆえに、彼の攻略ルートに入ってからのデレっぷりのギャップが素晴らしく、世の女子プレイヤーたちがもれなく悶絶する、人気キャラである。
風が吹き、彼の柔らかな銀髪を揺らす。
花びらがその銀髪についていたので、レベッカはすかさず彼に近づき、細い指をそっと額へと伸ばした。
「なっ、なんだ」
急に至近距離に来られて驚いたのか、クロードは少し後ずさる。
「ああ、驚かせて申し訳ございません。
花びらが前髪についておりましたので」
レベッカはピンク色の花びらを見せ、ふう、と息を吹いた。
「……なんだか、本当に別人みたいだな、君は」
急に近づいてきて少し照れたのか、クロードはレベッカから顔を背けた。
「そんなに違いますか?」
「ああ、昨日までの君は、何かあれば甲高い声でキーキーと文句を言っていたし、使用人たちも顎で使っていたし、皇太子のユリウスしか目になくて、俺の存在など目に入っていなかったからな」
「うっ」
長年の恨みつらみが溜まっていたのか、クロードは実に雄弁にレベッカへの不満を語った。
まあ、確かに高飛車でわがままなのが公式設定なので仕方がない。
「わ、私も態度を改めようと思いまして、淑女たるや謙虚に優雅に振る舞わねばですよね、うふふふ」
上司に毎日ペコペコしていた、事なかれ主義で通っていた社畜が、転生先で急に傲慢な態度を取れるわけがない。
せいぜい語尾をお嬢様言葉にするぐらいだと冷や汗をかきながら、会釈をする。
「なんだか新鮮だな。昨日の自分に、明日レベッカと二人で庭園を散歩するぞと言っても、信じないだろう」
冷徹公爵は珍しく冗談を言って、見惚れるほどの微笑みを浮かべた。
咲き誇る花たちも嫉妬するほどの、完璧なる美形っぷりにレベッカはめまいがした。