悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
深く息を吸うと、公園の新緑の香りが胸いっぱいに広がる。
噴水の水飛沫をぼーっと眺めながら、レベッカは今日1日を振り返る。
おしゃれなカフェでケーキと紅茶を嗜み、店の契約をし、景色の綺麗な公園で会話を楽しむ。初デートはとても楽しく、大成功だ。
しかしふと、思い出す。
(……待って、今日の目的って、クロード様のループを止めるための話をするんじゃなかったけ?)
店を開くとかでバタバタして1人で勝手に盛り上がってしまったが、大事なのはクロードが繰り返しの螺旋から抜け出せるようにするためだ。
「クロード様、ループから抜け出すためのことをもうちょっと考えませんこと?
後悔をしてまた過去に戻らないように!」
「俺は真面目に考えているんだがな」
「あなたの一番の望みは、『私の夢が叶って、私がいつも笑顔なこと』だなんて……」
そこまで言って、改めて恥ずかしいその言葉に赤面してしまう。
レベッカが幸せそうで、その隣に自分が居られればいい、などと。
チラリと隣に座る彼を見ると、目を細めじっと見つめ返してきて、また照れてしまう。
(うう、しっかりしなきゃ。彼がまたループしてやり直すことになったら、私の転生も終わっちゃうかもしれないし…!)
はやる胸を押さえながら、もう一度ゲームのストーリーを思い返す。クロードルートの結末を。
恋する相手はリリアではなく悪役令嬢だが、彼の根本の悩みは変わらないはずだ。
「ライネル家のご両親に、クロード様の意思を伝える、とか」
クロードの攻略ルートで、最大の敵は彼の両親だった。
公爵家の三男として、より地位の高い令嬢と結婚せねばいけないのに、まだ貴族界に入りたてのリリアではダメだと反対をされる。
そこで、彼は物心ついてからずっと両親の言うことを聞いてきていたが、彼女のことだけは譲れないと宣言し、過去の自分と決別するのだ。
両親の名前を出した途端、クロードは形の良い唇を引き締めた。
簡単に触れてはいけない、深く根付いた、彼の「弱み」なのだろう。
クロードは静かに噴水の飛沫を見つめていたが、小さく囁く。
「……君と結婚するのなら、それは避けて通れぬ試練だものな」
「え?」
聞き取れず、レベッカが問い返すも、クロードは首を横に振って苦笑する。
「後悔をしない人生を送るためには、後回しにはできないな。わかったよ、折を見て、必ず」
約束する、とクロードは頷く。
「クロード様がこれ以上ループして、辛い思いをしないように私も協力しますからね」
「ありがとう」
レベッカの真紅の髪が、クロードの青い瞳に映っている。
「――手をつないでも?」
優しい声色で、クロードが手を差し出してくる。
目を泳がせ、小さく頷くと、そっとクロードの手がレベッカの手と重なった。
指を絡ませると、暖かい体温が伝わってくる。
「楽しみだな、レベッカの店」
そう言って微笑むクロードの横顔を、緊張して見つめることができなかった。
水の音が響く公園で、ストーリー上結ばれるわけのない悪役令嬢と冷徹公爵は、少しずつ想いを通わせあっていく。
噴水の水飛沫をぼーっと眺めながら、レベッカは今日1日を振り返る。
おしゃれなカフェでケーキと紅茶を嗜み、店の契約をし、景色の綺麗な公園で会話を楽しむ。初デートはとても楽しく、大成功だ。
しかしふと、思い出す。
(……待って、今日の目的って、クロード様のループを止めるための話をするんじゃなかったけ?)
店を開くとかでバタバタして1人で勝手に盛り上がってしまったが、大事なのはクロードが繰り返しの螺旋から抜け出せるようにするためだ。
「クロード様、ループから抜け出すためのことをもうちょっと考えませんこと?
後悔をしてまた過去に戻らないように!」
「俺は真面目に考えているんだがな」
「あなたの一番の望みは、『私の夢が叶って、私がいつも笑顔なこと』だなんて……」
そこまで言って、改めて恥ずかしいその言葉に赤面してしまう。
レベッカが幸せそうで、その隣に自分が居られればいい、などと。
チラリと隣に座る彼を見ると、目を細めじっと見つめ返してきて、また照れてしまう。
(うう、しっかりしなきゃ。彼がまたループしてやり直すことになったら、私の転生も終わっちゃうかもしれないし…!)
はやる胸を押さえながら、もう一度ゲームのストーリーを思い返す。クロードルートの結末を。
恋する相手はリリアではなく悪役令嬢だが、彼の根本の悩みは変わらないはずだ。
「ライネル家のご両親に、クロード様の意思を伝える、とか」
クロードの攻略ルートで、最大の敵は彼の両親だった。
公爵家の三男として、より地位の高い令嬢と結婚せねばいけないのに、まだ貴族界に入りたてのリリアではダメだと反対をされる。
そこで、彼は物心ついてからずっと両親の言うことを聞いてきていたが、彼女のことだけは譲れないと宣言し、過去の自分と決別するのだ。
両親の名前を出した途端、クロードは形の良い唇を引き締めた。
簡単に触れてはいけない、深く根付いた、彼の「弱み」なのだろう。
クロードは静かに噴水の飛沫を見つめていたが、小さく囁く。
「……君と結婚するのなら、それは避けて通れぬ試練だものな」
「え?」
聞き取れず、レベッカが問い返すも、クロードは首を横に振って苦笑する。
「後悔をしない人生を送るためには、後回しにはできないな。わかったよ、折を見て、必ず」
約束する、とクロードは頷く。
「クロード様がこれ以上ループして、辛い思いをしないように私も協力しますからね」
「ありがとう」
レベッカの真紅の髪が、クロードの青い瞳に映っている。
「――手をつないでも?」
優しい声色で、クロードが手を差し出してくる。
目を泳がせ、小さく頷くと、そっとクロードの手がレベッカの手と重なった。
指を絡ませると、暖かい体温が伝わってくる。
「楽しみだな、レベッカの店」
そう言って微笑むクロードの横顔を、緊張して見つめることができなかった。
水の音が響く公園で、ストーリー上結ばれるわけのない悪役令嬢と冷徹公爵は、少しずつ想いを通わせあっていく。