悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
学園が長期休暇に入るまでの1週間は、一瞬で過ぎ去ってしまった。
レベッカは寮の自分の部屋に置いてあるドレスやワンピースを全て集め、人様に貸し出すのだからとほつれている部分は縫い直し、天日干しにする。
また、今回はレンタルがメインだが、作ったドレスの販売もしたいため、季節や着る人の年代を選ばない、シンプルなドレスを手づくりしていく。
授業が終わり、自分の部屋に戻り、寝るまでの間。ひと針ひと針気持ちを込めて。
手を動かしている間は、心の中が整理される気がする。
舞踏会で星屑の下話したことや、紅茶を飲みながら食べたケーキの味、彼の手の温かさを思い出す。
針を進めながら、クロードと過ごした日が、何度もレベッカの頭の中で繰り返される。
* * *
そして、店の開店当日がやってきた。
「よし、こんな感じで良いかしら」
レベッカが店の扉の前に出したのは、手書きの看板だ。
そこには『レベッカ・クローゼット』と書かれている。
レベッカの理想のクローゼットの中のような素敵な服がたくさんある、という意味でつけた、この店の名前だ。
城下町の通りから見えるように、窓の前には華やかなペールピンクのドレスを飾ってある。
店の扉を開けて入ると、右手には舞踏会などに着て行くのに相応しいドレスやアクセサリーが置いてあり、左手には普段使いできるシンプルなワンピースや靴が並べてある。
店の奥には男性の服も取り揃えてあり、タキシードやスーツ、ベストやズボンがある。
クロードが一度自分の屋敷に帰り、着ていない自分や2人の兄の服を持ってきたものだ。
持ちきれなかったのか、従者の運転する馬車にいっぱいの服を積んできてくれた。
しかし、帰ってきた彼の顔はなんだか疲弊していて、両親や兄と何か言い争ったのかもしれないと思ったが、頑なに彼は何も語らなかった。
店に並べる数時間ほど、無表情で何かを考え込んでいて、レベッカの前では穏やかなクロードとは違い、噂で流れる「冷徹公爵」に戻ってしまっていた。
それだけ、彼は家との確執があるのだろう。
一息つこうとレベッカは温かい紅茶を淹れ、開店前の店内で2人で飲むと、ようやくクロードの表情が柔らかくなってきた。
「なかなか良い店に仕上がったな。君のセンスが良いんだろう」
店の中に並べられた服や調度品を見回しながら、クロードはそっと微笑む。
「改めて、ありがとうございます、クロード様」
紅茶のカップを置き、レベッカは頭を下げる。
「あなたのループを止めるための策が、私の夢を叶えることだなんて驚きましたが……おかげさまで、自分のお店を開くことができましたわ!」
小さく拍手をしながら、レベッカは嬉しそうに声をあげる。
「期間限定で、経営も未経験ですけどね」
頬を掻きながら、少し不安も吐露するが。
前世でもできなかったことを、大好きなゲームの世界の中でやれるなど思わなかった。
「大丈夫だ、俺もいる。……さあ開店だ」
クロードの言葉は、短いけれども確実にレベッカの気持ちを後押ししてくれる。
そう言って、クロードは店を開くためゆっくりと立ち上がる。
* * *
晴れた昼下がりの城下町は、人通りも多く賑わっている。
「本日開店いたしました、素敵なドレスや靴を貸し出します!」
店の前で、レベッカが道行く人に声をかける。
「魅力的な自分になって、お出かけしませんか?」
窓からは、煌びやかなドレスが飾ってあり、貸し出すということが珍しいと人々の視線も集まる。
しかし、好奇心や興味の目は向けるものの、足を止めることはなく、皆各々の目的の場所へと向かってしまう。
着飾った若い恋人同士、子供を連れた買い物帰りの母親、シルクハットに背広を着た紳士。
老若男女、様々な人が通るが、なかなか足を止めない。
(前職の、店舗オープニング時を思い出すわ。
挫けちゃダメ、根気強く呼び込みしなきゃ…!)
「家にはない服を、試しに着てみませんかー?
あなたにぴったりな服を一緒に選びます!」
店の中で準備をしていたクロードも、外に出てきてレベッカの横に立つ。
「男性の服もあるので、ぜひ」
大声を出すのは苦手そうな彼だが、一生懸命声を出してくれている。
すると、一人の貴婦人が、レベッカの声に足を止めていた。
「あら、面白そうなお店ができたのね」
栗色の髪を編み込み、アップにしている婦人は、真っ白な日傘を持ったままレベッカに声をかける。
「今からお茶会に行くのだけれど、よかったら服を見立ててくれませんこと?」
真っ赤な口紅を引いた唇をほころばせ、記念すべき1人目の客人が来店した。
レベッカは寮の自分の部屋に置いてあるドレスやワンピースを全て集め、人様に貸し出すのだからとほつれている部分は縫い直し、天日干しにする。
また、今回はレンタルがメインだが、作ったドレスの販売もしたいため、季節や着る人の年代を選ばない、シンプルなドレスを手づくりしていく。
授業が終わり、自分の部屋に戻り、寝るまでの間。ひと針ひと針気持ちを込めて。
手を動かしている間は、心の中が整理される気がする。
舞踏会で星屑の下話したことや、紅茶を飲みながら食べたケーキの味、彼の手の温かさを思い出す。
針を進めながら、クロードと過ごした日が、何度もレベッカの頭の中で繰り返される。
* * *
そして、店の開店当日がやってきた。
「よし、こんな感じで良いかしら」
レベッカが店の扉の前に出したのは、手書きの看板だ。
そこには『レベッカ・クローゼット』と書かれている。
レベッカの理想のクローゼットの中のような素敵な服がたくさんある、という意味でつけた、この店の名前だ。
城下町の通りから見えるように、窓の前には華やかなペールピンクのドレスを飾ってある。
店の扉を開けて入ると、右手には舞踏会などに着て行くのに相応しいドレスやアクセサリーが置いてあり、左手には普段使いできるシンプルなワンピースや靴が並べてある。
店の奥には男性の服も取り揃えてあり、タキシードやスーツ、ベストやズボンがある。
クロードが一度自分の屋敷に帰り、着ていない自分や2人の兄の服を持ってきたものだ。
持ちきれなかったのか、従者の運転する馬車にいっぱいの服を積んできてくれた。
しかし、帰ってきた彼の顔はなんだか疲弊していて、両親や兄と何か言い争ったのかもしれないと思ったが、頑なに彼は何も語らなかった。
店に並べる数時間ほど、無表情で何かを考え込んでいて、レベッカの前では穏やかなクロードとは違い、噂で流れる「冷徹公爵」に戻ってしまっていた。
それだけ、彼は家との確執があるのだろう。
一息つこうとレベッカは温かい紅茶を淹れ、開店前の店内で2人で飲むと、ようやくクロードの表情が柔らかくなってきた。
「なかなか良い店に仕上がったな。君のセンスが良いんだろう」
店の中に並べられた服や調度品を見回しながら、クロードはそっと微笑む。
「改めて、ありがとうございます、クロード様」
紅茶のカップを置き、レベッカは頭を下げる。
「あなたのループを止めるための策が、私の夢を叶えることだなんて驚きましたが……おかげさまで、自分のお店を開くことができましたわ!」
小さく拍手をしながら、レベッカは嬉しそうに声をあげる。
「期間限定で、経営も未経験ですけどね」
頬を掻きながら、少し不安も吐露するが。
前世でもできなかったことを、大好きなゲームの世界の中でやれるなど思わなかった。
「大丈夫だ、俺もいる。……さあ開店だ」
クロードの言葉は、短いけれども確実にレベッカの気持ちを後押ししてくれる。
そう言って、クロードは店を開くためゆっくりと立ち上がる。
* * *
晴れた昼下がりの城下町は、人通りも多く賑わっている。
「本日開店いたしました、素敵なドレスや靴を貸し出します!」
店の前で、レベッカが道行く人に声をかける。
「魅力的な自分になって、お出かけしませんか?」
窓からは、煌びやかなドレスが飾ってあり、貸し出すということが珍しいと人々の視線も集まる。
しかし、好奇心や興味の目は向けるものの、足を止めることはなく、皆各々の目的の場所へと向かってしまう。
着飾った若い恋人同士、子供を連れた買い物帰りの母親、シルクハットに背広を着た紳士。
老若男女、様々な人が通るが、なかなか足を止めない。
(前職の、店舗オープニング時を思い出すわ。
挫けちゃダメ、根気強く呼び込みしなきゃ…!)
「家にはない服を、試しに着てみませんかー?
あなたにぴったりな服を一緒に選びます!」
店の中で準備をしていたクロードも、外に出てきてレベッカの横に立つ。
「男性の服もあるので、ぜひ」
大声を出すのは苦手そうな彼だが、一生懸命声を出してくれている。
すると、一人の貴婦人が、レベッカの声に足を止めていた。
「あら、面白そうなお店ができたのね」
栗色の髪を編み込み、アップにしている婦人は、真っ白な日傘を持ったままレベッカに声をかける。
「今からお茶会に行くのだけれど、よかったら服を見立ててくれませんこと?」
真っ赤な口紅を引いた唇をほころばせ、記念すべき1人目の客人が来店した。