悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
レベッカは、さらにもう一つ、言いたかったことがありうずうずする。
「あの、失礼を承知でお願いしたいのですが……」
おずおずと、鏡を見ながら新しい服装に嬉々としている婦人に提案するレベッカ。
「もしよろしければ、メイクもお直しさせていただけないでしょうか……!」
パーソナルカラーと骨格診断による服装は上手くコーディネートできたが、できればメイクも合わせたいと思ったのだ。
「お化粧? 下手だったかしら」
「いえ、とてもお上手です、ただ、その服に合った色味にしたいのです。
こちらはサービスですので、お代はいただきません!」
これは単なるレベッカの前世からの趣味だ。暇な時間さえあれば、美容系YouTuberの変身動画を見て研究していたものだ。
婦人は、真っ赤な口紅に紫のアイシャドウをつけているが、白いワンピースには合うが、ライム色のワンピースには目元と口元が浮いてしまっている。
そもそも、イエベ春の彼女には赤よりオレンジ系が似合うはずだと思った。
「じゃあやっていただこうかしら。ああ、恥ずかしいから、お兄さんはすっぴん見ないでね」
「承知いたしました」
照れ隠しで言ったお客様の言葉に、嫌な顔せずクロードは頷くと、礼をして隣の部屋へと引っ込んだ。
終わったら教えてくれ、と目で合図してきたので、レベッカも頷く。
椅子に座った婦人に肩周りにタオルをかけ、ゆっくりと化粧を落とす。
すっぴんを見ると、シミなどのない綺麗な肌なので、あえてパウダーのみを顔全体に叩く。
口紅はマットなオレンジ色を塗り、少し唇を分厚めに見せる。
そして、アイシャドウも口紅と同じマットなオレンジを瞼全体に塗り、まつ毛の際のあたりにブラウンを入れ、目を大きく見せるようにする。最後に、チークもオレンジをぽんぽんと叩く。
これだけで全然印象が変わるのだ。
「わあ……! とっても顔色が明るくなったわね…!」
婦人に手鏡を渡すと、驚いたように自分お顔を眺めていた。
「確かに、オレンジの方が合うわね。勉強になったわ」
「ありがとうございます!」
素直に褒められて、嬉しくて笑顔が溢れるレベッカ。
声でメイクを終わったことを察したクロードが隣の部屋から出て様子を見に来た。
「男性からのご意見はどう?」
レベッカが、無言で近づいてきたクロードに話を振ると、彼は小さく会釈をすると、椅子に座ったままの婦人の顔を正面から見据える。
オレンジの口紅とアイシャドウをつけ、ライム色のワンピースを着た彼女に向かい、
「とても綺麗ですよ」
凛とした声で言って、優しく微笑むクロード。
「あらやだ、何十年ぶりに主人以外の男の人にときめいちゃったわ! 女殺しね、あなた」
おほほ、と恥ずかしいのか口元を押さえながら、婦人は上機嫌に笑う。
クロードは片眉を上げ、胸に手を当てて優雅に礼をする。
全身準備を整えた婦人は、服と帽子のレンタル代の支払った。
当日から1週間後までレンタルができるようにしたが、彼女は今日の夕方、お茶会が終わったら戻ってきて返却するという。
荷物は軽い方がいいだろうと、元々着ていた服を預かり、店先まで送り出す。
「とても楽しかったわ、ありがとう。私はセリーヌよ」
「セリーヌ様、ぜひ良い一日を」
「あなたたちもね」
セリーヌと名乗った女性は、最後まで優雅に微笑み、退店した。
レベッカとクロードは並び立ち、記念すべき一人目のお客様が通りを歩いていくのを、姿が見えなくなるまで頭を下げる。
そうして顔を上げると、どちらかともなく見つめ合い、うまくいったことを笑い合ったのだった。
「あの、失礼を承知でお願いしたいのですが……」
おずおずと、鏡を見ながら新しい服装に嬉々としている婦人に提案するレベッカ。
「もしよろしければ、メイクもお直しさせていただけないでしょうか……!」
パーソナルカラーと骨格診断による服装は上手くコーディネートできたが、できればメイクも合わせたいと思ったのだ。
「お化粧? 下手だったかしら」
「いえ、とてもお上手です、ただ、その服に合った色味にしたいのです。
こちらはサービスですので、お代はいただきません!」
これは単なるレベッカの前世からの趣味だ。暇な時間さえあれば、美容系YouTuberの変身動画を見て研究していたものだ。
婦人は、真っ赤な口紅に紫のアイシャドウをつけているが、白いワンピースには合うが、ライム色のワンピースには目元と口元が浮いてしまっている。
そもそも、イエベ春の彼女には赤よりオレンジ系が似合うはずだと思った。
「じゃあやっていただこうかしら。ああ、恥ずかしいから、お兄さんはすっぴん見ないでね」
「承知いたしました」
照れ隠しで言ったお客様の言葉に、嫌な顔せずクロードは頷くと、礼をして隣の部屋へと引っ込んだ。
終わったら教えてくれ、と目で合図してきたので、レベッカも頷く。
椅子に座った婦人に肩周りにタオルをかけ、ゆっくりと化粧を落とす。
すっぴんを見ると、シミなどのない綺麗な肌なので、あえてパウダーのみを顔全体に叩く。
口紅はマットなオレンジ色を塗り、少し唇を分厚めに見せる。
そして、アイシャドウも口紅と同じマットなオレンジを瞼全体に塗り、まつ毛の際のあたりにブラウンを入れ、目を大きく見せるようにする。最後に、チークもオレンジをぽんぽんと叩く。
これだけで全然印象が変わるのだ。
「わあ……! とっても顔色が明るくなったわね…!」
婦人に手鏡を渡すと、驚いたように自分お顔を眺めていた。
「確かに、オレンジの方が合うわね。勉強になったわ」
「ありがとうございます!」
素直に褒められて、嬉しくて笑顔が溢れるレベッカ。
声でメイクを終わったことを察したクロードが隣の部屋から出て様子を見に来た。
「男性からのご意見はどう?」
レベッカが、無言で近づいてきたクロードに話を振ると、彼は小さく会釈をすると、椅子に座ったままの婦人の顔を正面から見据える。
オレンジの口紅とアイシャドウをつけ、ライム色のワンピースを着た彼女に向かい、
「とても綺麗ですよ」
凛とした声で言って、優しく微笑むクロード。
「あらやだ、何十年ぶりに主人以外の男の人にときめいちゃったわ! 女殺しね、あなた」
おほほ、と恥ずかしいのか口元を押さえながら、婦人は上機嫌に笑う。
クロードは片眉を上げ、胸に手を当てて優雅に礼をする。
全身準備を整えた婦人は、服と帽子のレンタル代の支払った。
当日から1週間後までレンタルができるようにしたが、彼女は今日の夕方、お茶会が終わったら戻ってきて返却するという。
荷物は軽い方がいいだろうと、元々着ていた服を預かり、店先まで送り出す。
「とても楽しかったわ、ありがとう。私はセリーヌよ」
「セリーヌ様、ぜひ良い一日を」
「あなたたちもね」
セリーヌと名乗った女性は、最後まで優雅に微笑み、退店した。
レベッカとクロードは並び立ち、記念すべき一人目のお客様が通りを歩いていくのを、姿が見えなくなるまで頭を下げる。
そうして顔を上げると、どちらかともなく見つめ合い、うまくいったことを笑い合ったのだった。