悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?〜私はドレスを作って穏やかに過ごしたいだけ〜
この間の、廊下ですれ違いざまにリリアが転び、たまたますれ違っていたレベッカが突き飛ばしたのだという濡れ衣を着せられたことを言っているのだろう。
「すぐ否定すれば良かったのですが、転んだ痛みで言葉が出てこなくて。
あのあとユリウス様にも、レベッカ様のせいではないと説明しておきました」
リリアは申し訳なさそうに目を伏せている。
ライバルであるレベッカを陥れた、腹黒性悪女なの? と疑っていたが、リリアに悪気はないようだ。
「あ、あははは。まあ、普段の私の言動を知っていたら、誤解してもしょうがないですよ。
じゃなかった、ですわよね!」
クロードも行っていた通り、転生してくるまではレベッカはヒステリックな女だったようなので、周りがリリアをかばうのも致し方無い。
「わざわざそのことを謝りに来てくださったのですか」
「はい。この間の謝罪と、靴のお礼をしたくて」
意を決して部屋まで来てくれたリリアに、自然と笑みがこぼれてしまう。
さすがは乙女ゲームのヒロイン、心根がまっすぐで綺麗な子である。
「あともう一つ……教えて欲しいことがありまして」
レベッカの淹れた紅茶を一口飲み、カップを置いたあと、リリアは切り出した。
「舞踏会で、私はどのような服を着れば良いでしょうか?」
ずい、と顔を近づけて、リリアはレベッカに質問をしてきた。
どうやらそれが一番聞きたかったようだ。
「舞踏会、ですか?」
「ええ。年に一回、学園の生徒全員が参加する、格式高い舞踏会が開かれるのです」
リリアの説明に、レベッカはゲームのストーリーを思い出した。
舞踏会は中盤のメインイベントで、そこまでに好感度が一番高い男性キャラと踊ることができ、イケメンスチルもゲットでき、ほぼその相手とのルートが確定する大事なシーンだ。
もうすぐ開かれるらしい。
「私、背が低くて子供っぽいのが悩みで、いつも高いヒールを履いていたのですが、靴ずれもするし、よく転ぶんです」
確かにリリアは童顔で小柄で、男性の庇護欲をそそるのだが、本人はコンプレックスなようだ。
自分が履いているパンプスに視線を落とし、コツン、と床を鳴らす。
「レベッカ様にこの靴をいただいて、ヒールが低いのに大人っぽく見えるのが驚きました。
しかも歩きやすくて、疲れないんです」
無理して高いヒールを履き、自分の短所を隠そうとしていたリリアが、デザインもよく歩きやすい、機能美を取り揃えた靴を初めて履いて、感動したようだ。
「なので、舞踏会のドレスも、私に似合うものを教えて欲しいと思いまして……」
最後の方は消え入りそうな声で、リリアが話す。
似合う靴を教えて、プレゼントしてくれたレベッカに感謝し、さらなるアドバイスを欲しているようである。
なんていじらしくて可愛いの……!
その人の体型や雰囲気にアイテムを合わせる、自分のセンスを褒められて嬉しかったレベッカは、うんうん、と大きく頷いた。