カスミソウのキモチ
ぬらりひょんのヒミツ
「よねだまほですー。すきなようかいはーぬらりひょんですー」

 幼稚園のとき、自己紹介でこう言ったら、先生たちがポカンとしていたのを覚えている。
 そして友達からは「ぬらりひょんみたいな妖怪が好きだなんておかしい! お前は妖怪の仲間だ!」と言われた。

 ぬらりひょんってが好きって、そんなに変かなぁ?
 
 まず、名前が可愛いと思うの。ぬらりで、ひょん。響きがキュートでしょ。そして頭が大きいのもラブリィポイント。
 夕方の忙しい時間帯にどこからともなくやって来て、勝手に家に上がりこんでお茶を飲んだり、キセルでタバコをふかしたりしてくつろいじゃうふてぶてしさも素敵。

 どこをどう見てもいい!
 それなのに、みんなぬらりひょんの魅力を分かってくれない。どうしたらいいんだろう?

 そうやっていろいろ考えて思いついたのが、ぬらりひょんの絵を描くことだった。

「真帆、なにを描いているの?」

 幼稚園から帰ってきたあと、一心不乱に絵を描いていると、お母さんが覗き込んできた。

「これねぇーぬらりひょんなのー」
「あらぁ、上手ねぇー! とっても可愛いじゃない」

 やった! お母さんが褒めてくれた! ほらね、やっぱり可愛いでしょ!
 夜に帰宅したお父さんも褒めてくれて、調子に乗った私は、妖怪の絵を描くことに夢中になった。

 本当は、妖怪(おもに、ぬらりひょん)の魅力を伝えるのが目的だったのに。なぜか周りからは絵の上手さばかり褒められて、絵画教室に通ったり美術部に入ったり……それでも、妖怪愛はずっと続いていた。

 そして、気がついたらデザイン科のある高校へ入学。そこで日本画と出会って、妖怪の絵を描くにはこれだ! と思った。

「米田さんは、また妖怪を描いているの?」

 美術の先生には、いつもこう言われる。だって、妖怪が好きなんだもん。好きなものを、好きなように描くのが楽しいのだ。

「せっかくだし、米田さんも日本画の公募に出してみない?」
「公募ですかー? でもー日本画はまだ描きはじめたばかりだしぃ……」
「そんなの関係ないわよ。この前、あなたと同い年で高校から本格的に日本画を習いはじめた子が、最年少で大賞を受賞したのよ」

 そう言って、先生が雑誌を開いて見せてくれた。
 日本画の公募はよく知らないけれど、どうやら結構有名なもの?

 大賞受賞作は、とっても素敵な風景画だった。景色がバーンと目の前に広がるような大胆な構図なのに、よくよく見ると筆づかいはすごく繊細。これを、私と同じ16歳が描いたの?
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