政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~
まさか婚約指輪と結婚指輪を同時に選ぶことになるなんて、思ってもみなかった。
ふたりが気に入ったデザインで、重ねづけもできるタイプを選んだ。
「綺麗」
その夜、ふたりだけで指輪の交換をする。
場所はいつものリビングだし、ふたりとも普段着のままだ。それでも紗彩の心は浮き立つ。
「ずっとそばにいてくれ、紗彩」
「あなたも」
「いつか家族だけで式を挙げよう」
「ええ」
「それから、ハネムーンにも行こう」
自分たちの結婚は世間とは少し違ったが、結果的に愛しあって結ばれたのは偽りではない。
初めはお互いの事情で結婚を決めたけれど、素直に気持を伝えてからはひとつずつ夢が形になっていく。
結都がはめてくれた、左手の薬指に輝く指輪。
そのかすかな重みだけで、こんなにも安心できるのだと紗彩は知った。
目覚めたら、お互いの温もりに包まれている。会えない昼間は、どうしているかなと相手を想う。
そして夜には愛しあう喜びに震える。
ひとつ誤算だったのは、結都の体力かもしれない。紗彩の華奢な体では、ひたすら翻弄され続けるからだ。
秘かにピラティスでも始めようかと、紗彩は嬉しい悲鳴をあげている。
こんなふうに、穏やかにふたりだけの時間は流れていった。