1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「許せない、許せない」
秋葉は呪うように言いながらバッグからライターを出すと、書類をつかんだ。
そして火をつける。
「あんたなんか死んでしまうといい! この会社もつぶれてしまえ!」
燃え上がった書類が秋葉の手から落ち、散らばった紙に燃え移っていく。
山岡は声にならない声をあげ、段ボール箱を抱えて走り出した。
「待ちなさいよ!」
秋葉が叫んでも振り返りもせず、ドアから飛び出して倉庫の方へ向かう。
火は少しずつ少しずつ、燃え広がっていく。
床に倒れたままの紗彩に気がついた秋葉は、その手首を握ってズルズルと引きずった。
煙を感知した火災報知機が鳴り響いていたが、秋葉の耳には届かない。
「社長の娘に生まれるなんて、運がいいだけよ」
ドアが開いたままになっていたので、秋葉は紗彩を研究開発室の前の廊下まで連れてくると、そのままゴロンと転がした。
「それも、今日でおしまい」
一階フロアとつながる重いドアが、風圧でバタンと閉まったことには気がついていない。
うつぶせになった紗彩を見下ろしながら高笑いする。
「お嬢ちゃん、あなたの好きな研究室と一緒に燃えちゃいなさい」
山岡は防犯カメラの少ない倉庫側から出入りしていた。よほど慌てたのか、引き戸もシャッターも開いたままだ。
ハハハと笑いながら、秋葉は山岡のあとに続くように、開けっぱなしの引き戸から出ていった。