1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています


***



紗彩と義母の三人で食事の約束をした日、結都は約束より少し早い時間に足立病院へ着いた。
点滴に時間がかかると聞いていたが、義母は希実と楽しそうにお喋りしながらロビーで待ってくれていたようだ。

「お待たせしました」
「あ、結都さん」

顔色はいいし、体調はよさそうだ。

「紗彩はまだですか?」

「そうなの。自転車飛ばして来るって言ってたのに」

「その辺りまで迎えに行ってきましょうか」

結都が申し出ると、義母はスマートフォンをバッグから出した。

「夫が亡くなってから、もしなにかあったたらとあの子の位置情報がわかるようにしているのよ」
「しっかりしてるようで、紗彩は時々うっかりさんですよね」

そのとうりだと笑いながら希実とふたりで確認してくれたが、画面を見て首をひねっている。

「おかしいわね」
「どうかしましたか?」

「ずっと会社にいるみたい。残業なんてうちはさせないのに」

「紗彩のことだから、スマホを忘れてるんじゃないですか?」

義母と希実はのんびりと話しているが、結都はなぜか胸騒ぎがする。
明日は監査が入る日だ。もし、山岡がなにか仕掛けてくるとしたら今夜かもしれない。
乳価をチマチマとごまかしていた男にそこまで度胸があるとは思えないが、この目で確認してみた方がよさそうな気がする。

「チョッと様子を見てきます。足立さん、義母をよろしくお願いします」
「わかりました。お気をつけて」

希実は結都の態度になにか感じてくれたようだ。不安げな義母を希実に託して結都は駆け出した。
結都は慌しく自分の車に乗り込むと、梶谷乳業へ向かった。
何事もなければいいがと、祈るような気持だった。

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