1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています


夫の話は無視したのか、千穂は紗彩の母とおしゃべりを始めた。
千穂の手にはスマートフォンが握られている。

「あら、珍しいお花ですね」
「さっきそこで見つけて、写真撮ったのよ」

どうやら撮影したばかりの花の写真をふたりで見ているようだ。

「これ、名前がわからないの。スイートピーみたいでしょ?」
「たぶん、連理草(れんりそう)じゃありませんか」

スマホを見て答えたのは榊原だ。今日は正親からカメラマンの役を仰せつかっている。
カメラの腕はプロ並みだというが、どうやら山野草の名前にも詳しいらしい。

「細長い葉が対になっているでしょう?」
「あら、ホント」
「だから連理って呼ばれているそうです」

「榊原さん、お仕事以外もよくご存知なんでもですねえ」

母が感心したように褒めると、榊原は照れくさそうにコーヒーカップを手にした。
このところ、忙しいはずの榊原がよくこの辺りで見かけられている。
カフェオープンに向けた手伝いと言いながら、高原に癒されているのかどうなのか、誰も本人には聞けないでいる。

「花言葉はご存知ですか?」
「たしか、永遠の喜び? とか、連理というくらいですから今日にふさわしいでしょう」




< 127 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop