1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
一階奥の重いドアを開けて廊下に出ると、さっきまでの明るい空間とは一変する。
紗彩が所属しているのは、研究開発室だ。
聞こえはいいが、実際は本社ビルの一部を改築したものだ。
右側のガラス越しに作業風景がよく見えるが、古くさい設備のまま使用されているのがよくわかる。
廊下の反対側にはサッシの引き戸があって、昔からある倉庫に繋がっている。
ここは古い資料や書類置き場として使っていたのだが、ペーパーレスの時代となった今では利用価値がないし、小さな窓しかないから常時照明が必要だ。
人感センサーつきのものに交換したが、無駄に光熱費がかかる。
母とも『新しい研究室が欲しいね』と話し合っているところだ。
撤去するとなるとコンクリートの処理だけでも意外にお金がかかるので、少しでも出費を押さえたい今は答えが出せないまま放置されていた。
研究開発室のメンバーは少ないが、レシピ開発や素材集めからデータの収集までこなすフル回転の部署だ。
忙しくても、そのぶんチームワークはいい。
みんなでがんばって、梶谷牧場の生乳を使ったヨーグルトをヒットさせたいし、チーズやアイスクリームにも挑戦していく予定だ。
「今日もがんばりますか」
紗彩は今日の予定を組みたてながら、研究開発室専用のロッカーで白衣に着替えた。