1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています


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三月の声を聞くと同時に、春らしくなってきた。

空気が乾燥して強い風の吹く日が多いから、火災が起こりやすいといわれている季節だ。
実際に一年で一番火災が発生するのは寒い冬ではなく三月から四月にかけてだから、消防士にとって緊張感のある季節でもある。

事故や火事、恐ろしい自然災害は予測がつかないものだ。
結都たち消防隊員は、最悪の事態で最善を尽くせるように日々体を鍛えながら訓練を続けている。

この街には東西南北の四つの区があって、それぞれに消防署が置かれている。
結都が勤めているのは北区の消防署だ。

消防士といっても様々な役割があって、火災などの災害現場に駆けつける消火隊、病気やけがをした人を運ぶ救急隊、それに火災や水難事故などで人命救助にあたるレスキュー隊がある。

結都もほかの隊員と同様に、出動のない時には学校や会社に出かけて消防訓練を行ったり、建物の内部の立ち入り検査や自動火災報知システムの点検を受け持つこともある。

この日、結都は防災点検の担当だった。
訓練と点検のために訪れたのは市内にある中堅の乳製品メーカー、梶谷乳業だ。


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