政略結婚ですが、幸せです ~すれ違い夫婦のやり直し計画~
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あれから母とは気まずいままだったが、希実から誘われていたパーティーの日がやってきた。
土曜日の夕方六時から始まるから、一時間くらい前に希実の家に行けばいいかと思いのんびりしていた。
すると【三時には来て】というメッセージが希実から届いた。
(三時? そんなに早くからどうするんだろう)
なにか相談事でもあるのかと思っていたら、足立家に着くなりシャワーを浴びろと言う。
「とにかく、普段お手入れしていない分をとりもどさなくっちゃ」
「そんなに頑張っても、急には変われないよ」
希実は任せてと言わんばかりに、髪をセットしたりメイクをしたりと手順よく進めていく。
「もともとはかわいいんだから、チョッと手を加えたら……」
紗彩が呆気に取られているうちに、希実が頑張ってくれた。
しっとりとつやのある髪はゆるいうち巻きにブローされ、いつもより濃いかと思ったお化粧は、とてもナチュラルな仕上がりだ。
顔全体が明るく見えるのは、借りているクリームイエローのワンピースのおかげだろう。
サイズは肩の周りが少しキツメだったが、その他はぴったりだった。
最後に塗られたオレンジ系の口紅が顔全体を引き締めてくれたので、化粧気のないときのぼんやりとした顔とは別人のような仕上がりだ。
「ほら、お化粧ひとつでこんなに変わる」
「びっくりした」
「自分を綺麗に見せるのも、営業のうちだと思いなさいね」
希実からの忠告を、ありがたく聞いておくことにする。
「お姉さんのドレス、素敵ね」
広めのボートネックに、肩から軽くふくらんだ七分袖が愛らしい。
柔らかい生地だからかフレアスカートもボリュームのわりに軽いし、キュッと絞ったウエストの共布のリボンが上品だ。
「これが紗彩に一番似合うだろうって、姉さんが選んでくれたんだ」
自分に誂えたようなワンピースを着て、紗彩も久しぶりに華やいだ気分になった。
「柾さんは?」
「準備があるから先に行ってるって」
希実はオリーブグリーンの大人っぽいドレスだ。
上半身はスリムな体にフィットしているのに、裾にいくほど広がりがあるロングスカートがよく似合っている。
小柄な紗彩にはとても着られない、足の長い希実ならではの着こなしだ。
「では、行きますか」
「はい!」