1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
サッシの引き戸には鍵がかかっていなかったので、すぐに倉庫に入ることができた。
そこはコンクリートがむき出しになった、がらんとした空間だった。
古めかしい戸棚に、いくつか段ボール箱が置かれているくらいだ。
出入り口は古いままのシャッターで、中が空っぽだし取り壊す予定だから防犯対策は重視されずにいるようだ。
倉庫内に危険物がないのを確認して、本社の点検は終わった。
「お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
北消防署のメンバーが帰ろうとしたら、結都は声をかけられた。
「あの、白川さん」
「はい」
さっき三枝に名前を呼ばれたのを覚えていてくれたらしい。
「あの時はありがとうございました」
「やけどのあとは残っていませんか」
「もう治りました。本当にありがとうございました」
はにかんだような愛らしい声だ。
「お仕事中にすみません。どうしてもお礼だけお伝えしたかったので」
そう言うと軽く頭を下げて、パタパタと走り去ってしまった。
なぜか結都は、その後姿をじっと見つめてしまった。