1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています





命を救う仕事がこの世界にはある。
なんだか大げさな言い方だが、小学生の頃にはそんな職業につきたいと思った。

父にその話をすると、取り合ってはくれなかった。
父は白川ホールディングスという大きな組織を率いている。

『お前は白川家を継ぐために生まれてきたんだよ』
『他の職業につくという選択肢はないんだ』

何度訴えても父の返事は同じだった。
高校に入った頃には、決められた人生を歩きたくない気持が湧きおこった。
それからだろうか。結都は心から笑うことから縁遠くなってしまった。

消防士になりたいという気持ちは、日に日に強くなっていく。
結都はその夢を誰にも告げず、胸に秘めたまま行動に移すことにした。

大学に合格したことをきっかけに、家を出てひとり暮らしを始めた。
就職の時には、この街を選んで公務員採用試験を受けた。
まさか父も勝手にそこまでするとは思っていなかったのだろう。ひどく怒られたが、自分の意志を曲げなかった。
父との関係がこじれてから、母に苦労させてしまったことは申し訳ないと思っている。
そのうち結都を跡継ぎにすることを父は諦めたのだろう。たまに顔を合わせても呆れた顔をするだけで、なにも言わなくなった。



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