1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
採用試験に無事合格して、消防学校で半年間学んで消防士になった。
とうとう父は折れて消防士になることは認めてくれたが、ひとつだけ条件をつけてきた。
『早く結婚して、跡継ぎをつくれ』
白川ホールディングスの創業者一族として、代々受け継いできた社長の座だ。
父はまだ若いから引退するまで先は長い。結都の子を跡継ぎにしようと考えたようだ。
早く結婚して子どもを作らせて、その子を後継者に相応しく父の手で育てようというわけだ。
『結婚して子どもを持つんだ』
『男でも女でも、たくさん子どもがいた方がいい』
わが父ながら、とんでもないことを言いだしたものだ。
結婚なんて、まだ先だと思っていた。
それに妻となる女性にも、どんな人生を歩みたいか希望や理想はあるだろう。
それを無視して、家のために子どもを産ませろというのか。
父の時代錯誤な考えを聞いてしまってから、ますます結婚する気がなくなった。
とりあえずわかったふりをしておいて、父が諦めるのを待とうと考えた。
後継者なら、白川家の親族の中にだって社内にだってふさわしい人物は大勢いるのだから。
だが俺のごまかしにも、ついにリミットがきたようだ。
父がわざわざ会いに来るのは、結婚をせかすためだろう。
なんとか言い逃れる方法を探さなければいけない。
今の仕事を続けるために結都が取れる道は結婚して子どもを持つしかないなんて、誰にも言えない悩みだった。